研究課題/領域番号 |
25420889
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
室賀 健夫 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (60174322)
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研究分担者 |
長坂 琢也 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (40311203)
菱沼 良光 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00322529)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バナジウム合金 / イットリウム添加 / 高温引張強度 / クリープ強度 / 衝撃特性 |
研究概要 |
様々な酸素、窒素不純物量を有するV-4Cr-4TiとV-4Cr-4Ti-Yを試作し機械試験及び組織観察を行うことで、Y添加が高温強度と侵入型不純物の拡散に及ぼす影響を明らかにした。V-4Cr-4Ti-Y-0.009Oは800℃の熱処理で硬さは完全に回復することが示された。1100℃で熱処理しても硬さが変化しなかったことから、Y酸化物は熱的に安定な析出物であることが明らかになった。しかし、V-4Cr-4Ti-Y-0.27Oは熱処理温度1000, 1100℃では温度に比例して硬さが増加した。Y酸化物によって捕捉しきれなかった余剰の酸素不純物がマトリックス中に再固溶したため、硬さが増加したと考えられる。 Y添加によって熱的に安定なY酸化物が生成するが、Y酸化物による高温強度の低下が確認された。V-4Cr-4Ti-Y-0.009Oの引張強度は650℃を超えると減少し始め、一様伸びが増加した。米国機械学会による原子炉圧力容器の設計基準を用いると、V-4Cr-4Ti-Y-0.009Oの700℃における設計応力は85 MPaと求まり、Y添加材はこの基準を満たすことが明らかになった。 Y添加に加え酸素不純物混入が衝撃特性に与える影響を調べた。その結果、V-4Cr-4Tiでは酸素不純物混入によって衝撃特性の劣化が生じた。しかし、V-4Cr-4Ti-Y-0.27Oは0.27 wt%という多量に酸素不純物を含んでいるにもかかわらず、DBTTは液体窒素温度付近であり良好な衝撃特性を保持していた。室温以下の低温領域における降伏荷重の試験温度依存性では、酸素量の増加に伴い降伏荷重は増加した。しかし、Y添加をすることで降伏荷重は減少した。故に、V-4Cr-4Ti-Y-0.27Oでは室温以下の低温領域においてはY添加によって酸素混入による固溶硬化を抑制したため、良好な衝撃特性を保持できたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で核融合炉バナジウム合金の低温脆性の改善のため、脆化要因である酸素との結合力が合金元素であるTiよりも強いYをさらに添加することにより、照射下の酸素のマトリックスへの放出を抑え、照射脆化を抑制することを目指し、Y添加による材料組織の照射、非照射における変化を明らかにすることを目的とした。本年度は非照射試料について、酸素とYの量を変えた多種類の試験試料を作成し、系統的な試験を行うことにより、Yでは捕獲できない過剰酸素量と特性の明確な相関が得られた。また、高温強度の低下が設計許容範囲内であること、Y添加により低温衝撃特性の劇的な改善が認められ、酸素捕獲効果により説明できたこと、などは当初予想を上回る達成度である。一方、照射試験は装置の都合で予備試験を行うにとどまった。これら全体を合わせると、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究により、酸素とイットリウムの相互作用が明確に示されたので、この知見をもとに、26年度以降では酸素とイットリウムの添加条件を絞り、イオン照射、中性子照射を強力に進める。大学共同利用により、タンデム加速器を用いて各合金に2.4MeV V イオンまたはCu イオンをRT-400℃の範囲で0.1-10 dpa 照射し、ナノインデンター(核融合科学研究所)を用いて、表面から1μmの範囲の硬度変化を明らかにする。まず高純度V-4Cr-4Ti(NIFS-HEAT-2)の効果について、照射量、照射温度による硬度上昇の評価、照射領域の電子顕微鏡組織観察による、発生した欠陥集合体の密度、サイズ、構造(バーガースベクトル、生成結晶面)との相関を求める。次にこれらの結果と比較しながら、酸素、窒素量の増加、Y 添加の有無による差を明らかにし、Y 添加効果とそれが機能する温度、照射量の範囲を明らかにする。大学共同利用により、BR-2 原子炉で照射した試料(準備済み)について、シャルピー衝撃試験、電子顕微鏡組織観察を行い、Y 添加による衝撃特性の改善効果の適用範囲を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
比較材としてのODS鋼の加工費が、一度に発注することで節約が可能になった。 試験加工費を増やすことにより、試験試料の本数を増やす予定である。
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