研究課題/領域番号 |
25420893
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
小林 政弘 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (30399307)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁場閉じ込め核融合 / ストキャスティック磁場 / 高Z不純物 / 数値シミュレーション / 分光計測 / 国際研究者交流 / アメリカ:ドイツ |
研究実績の概要 |
プラズマ中の不純物から放射される発光を分光器で計測し、2次元分布を得た。これと数値シミュレーションの比較を詳細に行い、不純物輸送モデルの検証をすすめた。これにより、現状のモデルをそのまま用いて不純物からの発光の2次元分布を計算すると、実験で得られた結果と異なることがわかった。シミュレーション結果が実験を再現するためには、現行のモデルに対して以下の修正が必要であることがわかった。 1.磁力線に沿った温度勾配の方向に働く力を10倍程度にすると、実験結果に近づく。 2.磁力線に垂直方向の輸送の拡散係数を数倍~10倍に大きくすると、実験結果に近づく。 3.不純物の発生位置を、プラズマと直接接触していると思われるダイバータ板のみではなく、装置壁全体に分布させると、実験結果に近づく。この時、装置壁に均一に発生位置を分布させた場合と、局所的に分布させた場合とでは、発光の2次元分布にあまり変化は現れない。 また、前年度までに進めた2次元可視分光計測を用いて、不純物からの発光スペクトルのドップラーシフト量を解析し、不純物の磁力線方向の流れの速度を見積もった。荷数2の炭素不純物に関して、おおよそ10000 m/sの速度でダイバータ板に向かって流れていることがわかった。これは現行のモデルで得られる不純物の速度(1000 ~10000 m/s)よりも若干大きい。違いの理由としては、背景プラズマから不純物への運動量伝達のモデルに原因があると考えられる。 これらの成果は、不純物輸送のモデルの定量的な検証に重要であり、将来の装置設計にとって有用な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分光計測系の準備と整備がほぼ終わったことに加え、高Z不純物(鉄)に関する分布データの取得が昨年度行われた。また数値シミュレーションについてもコードの高Z不純物に対する拡張が終わった。これらを組み合わせて解析を進めることにより、平成27年度では当初の目標である、高Z不純物における輸送モデルの検証が進められる見通しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度までで分光器(可視、真空紫外)の準備と整備が終わり、不純物からの発光の2次元分布計測が可能になった。さらに高Z不純物(鉄)からの発光についてもデータ収集を行った。数値シミュレーションにおいても、コードの輸送係数の取扱の改良、高Z不純物への拡張が終わった。平成27年度は、実験で得られた高Z不純物からの発光分布をシミュレーション結果と比較し、現行の不純物輸送モデルの検証を高Z不純物に対して行う。具体的には、モデル中の輸送係数、空間分布、不純物の発生量、発生の空間分布について変化させ、実験をより正確に再現するパラメータ領域を探す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初に予定していた学会発表における旅費が、航空運賃の変動などにより軽減されたこと、および研究者の招聘期間の短縮により招聘費が軽減されたことにより残りが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた残りについては、平成27年度の旅費として使用する予定である。
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