研究課題/領域番号 |
25420894
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
岩井 保則 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, 研究主幹 (70354610)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トリチウム / 触媒・化学プロセス / プラズマ・核融合 / 化学工学 / 原子力エネルギー / トリチウム水 / 濃縮 / 同位体分離 |
研究概要 |
核融合プラントで発生する大量の高濃度トリチウム水を濃縮・ガス化処理してトリチウムガスを燃料として再利用するトリチウムリサイクル技術の開発は燃料循環システムの確立とトリチウム安全性から必須の課題である。しかし特殊な疎水性白金触媒を用いて高濃度トリチウム水を濃縮処理する触媒充填塔の大型化は、粒状の疎水性白金触媒を充填した触媒塔では塔内の均一な水分散が図れない為、現時点で見通せていない。本研究では良好な水分散性が得られる商用規則充填物をベースに、既に特許を取得している表面疎水化技術と疎水性表面に貴金属を担持させる技術を組み合わせ、規則充填物の疎水性触媒化を実現する新たな技術の開発を目的とする。 今年度は複雑な形状の水分散用塔内規則充填物表面を均一に疎水化させる手法に関する研究を主に実施した。白金粒子径が水素酸化活性に与える影響の実験的精査では粒子径を数ナノメートルに微細化した場合、触媒活性は向上するが水蒸気存在下において水蒸気による反応阻害の影響を顕著に受けやすくなることを明確とした。よってトリチウム水濃縮処理には白金粒子径を数十ナノメートル程度に制御した触媒が有利であるとの結論を得た。触媒を疎水化する化学修飾剤はシラン系各化合物を中心に精査した。トリチウム水濃縮処理の使用環境である高濃度水蒸気存在雰囲気下では化学修飾剤による疎水化が施された触媒では白金表面の水蒸気被覆に反応が支配されるため、化学修飾剤による疎水度が触媒活性に与える影響は小さいとの評価を得た。安定した疎水性能と十分な耐熱性を確保するため弱疎水型修飾剤が選択することが有利であるとの結論を得た。充填物表面と親和して剥離等が生じずに表面に微細な細孔を形成しつつ、均一に覆うことを目標にしたウォッシュコート形成法につき、良好な水分散性を持つ金属ハニカムの疎水性触媒を試作し、良好な水分散と触媒性能が両立できる見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね当初計画を若干上回るペースで研究は進捗しており、商用規則充填物のような水分散性の良い複雑な金属担体の疎水性触媒化に成功した部分で初年度の目標をクリアしている。触媒の性能について水素酸化にて評価した場合では、過去の知見では金属担体を疎水性触媒化した場合、その性能が格段に低下するとの報告がなされていたが、今回の得られた金属ハニカム疎水性触媒は高度な疎水化が可能なシリカ担体の疎水性触媒と同等の性能にまで到達している。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要にも記したとおり、トリチウム水濃縮処理に向けた疎水性触媒の最適化方法が、水素酸化用疎水性触媒の最適化方法と異なる可能性が高いことが見いだされた。今後の研究を効率よく推進させるため、トリチウム水濃縮処理を模擬する実験設備の整備を前倒しで早急に進めることを計画している。
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