核融合プラントで発生する大量の高濃度トリチウム水を濃縮・ガス化処理してトリチウムガスを燃料として再利用するトリチウムリサイクル技術の開発は燃料循環システムの確立とトリチウム安全性から必須の課題である。しかし特殊な疎水性白金触媒を用いて高濃度トリチウム水を濃縮処理する触媒充填塔の大型化は、粒状の疎水性白金触媒を充填した触媒塔では塔内の均一な水分散が図れない為、現時点で見通せていない。本研究では良好な水分散性が得られる商用規則充填物をベースに、既に特許を取得している表面疎水化技術と疎水性表面に貴金属を担持させる技術を組み合わせ、規則充填物の疎水性触媒化を実現する新たな技術の開発を目的とする。 前年度に開発に成功した粒状疎水性触媒技術を基に良好な水分散性能を有する規則充填物をまるごと疎水性触媒化する技術をもとに、今年度は作成した規則充填型疎水性触媒の性能試験を実施し、所定の性能を達成することを確認した。しかし規則充填型疎水性触媒は構造的問題から触媒の単位容積あたりの充填密度が粒状疎水性触媒より低下することから試験を通じて高濃度トリチウム水を効率よく濃縮処理するためには新たな性能向上法を模索する必要性を認識した。以前の研究で高分子を母材とする疎水性触媒を放射線照射した際に性能が大幅に向上した経験から、母材表面の酸性度が性能に大きく影響していると予測した。金属母材の触媒を放射線照射した場合は同様の効果が見込めないため、触媒を塩素と水素の共存下で反応させ、母材を腐食させることなく化学的に母材表面の酸性度を制御することで性能を向上できることを確認した。酸性度の向上の効果は1週間程度の連続運転では効果が持続し、規則充填型疎水性触媒の性能を向上させる見通しを得た。実用に向けては酸性度の最適化と年レベルでの連続運転による性能の維持確認試験が必要であり、本研究終了後の課題であると考えている。
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