研究課題/領域番号 |
25420897
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
浦野 創 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 那珂核融合研究所, 研究主幹 (70391258)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Hモード / ELM / ペデスタル / プラズマ / JT-60 / JET |
研究実績の概要 |
本研究では、トカマク式核融合炉においてプラズマ周辺部に形成される輸送障壁によって閉じ込めが改善される高閉じ込めモード(Hモード)を対象として,周辺プラズマ構造と周辺部に局在する不安定性に及ぼす影響を理解し,将来の核融合炉における周辺プラズマ性能を定量的に予測することを目的としている.特に周辺ペデスタル構造は炉心プラズマ全体の閉じ込めや核融合炉の出力に対する境界条件となるため適切な予測とその制御が求められる.一方,英国カラム核融合研究センターでは,近年ITERを想定した金属壁を導入した実験を実施しているが,金属壁下では金属不純物流入を防ぐために燃料粒子の定常的なガス注入を行うという特徴的な運転が必要となる.そこで平成27年度は,英国カラム核融合研究センターJETにおいて,周辺ペデスタル構造へのガス注入の影響を調べた.高・低三角度プラズマで重水素ガス注入率のスキャン実験を実施した.周辺部はいずれの場合も高トロイダルモード数のMHD不安定性によって決定され,高三角度ではガス注入率の増加とともに急速に周辺ペデスタル幅が増大した. 一方で, 低三角度配位では周辺ペデスタル幅の変化は小さかった.JET金属壁では周辺部は高トロイダルモード数のMHD不安定性で支配され,三角度の低下に伴って安定領域は縮小した.さらにガス注入率の増加とともに周辺電流密度が低下し,安定性境界に沿って周辺圧力勾配が減少するため,高三角度の方が周辺圧力勾配の変化が大きく,周辺ペデスタル幅は周辺圧力勾配の減少に対応して増大する傾向があることを示した.周辺ペデスタル幅が広がることで,低い圧力勾配でも周辺領域を不安定化させるのに十分なブートストラップ電流を保持していると考えられる.本研究結果は2015年10月にドイツで開催された第15回Hモード物理及び輸送障壁に関するIAEA技術会合において発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまで 研究を進めてきた国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JT-60Uを含め,新たに英国カラム核融合研究センターJETの実験結果を解析し,主に水素同位体,衝突周波数,周辺電流密度に準じた周辺分布データベースに基づいたプラズマ境界構造の評価とELM特性の解析し,それらを包括的にまとめ,国際会議発表を行ったため.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,前年度に引き続き英国カラム核融合研究センターJETにおけるHモード実験に参加し,衝突周波数,周辺電流密度,不純物,規格化圧力等による周辺プラズマ構造への影響に関して解析を行う.また,国立研究開発法人日本原子力研究開発機構JT-60UにおけるHモード周辺プラズマに対する電磁流体力学的不安定性に関する解析を実施し,研究成果を本年10月に開催されるIAEA核融合エネルギー会議で発表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業の目的をより精緻に達成するため、当初計画に追加し英国カラム核融合研究センター(H27年2月~H28年1月)における実験に参加し,周辺プラズマ計測をより詳細に行った.これまでに取得した実験データを用いて本研究は研究計画に沿って順調に進んでいるが,さらに発展した研究内容の議論及び実験参加のために予定していた訪問を次年度以降に持ち越す形となった.
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度における研究成果を10月に開催される国際会議において発表予定である.また英国カラム核融合研究センターでの研究内容の議論及び実験参加を行う.これらの目的とそのために必要なデータ解析機器のために次年度使用額を用いる計画である.
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