過年度の研究では理解が不十分であった冷却水へのトリチウムの透過率を評価し、最大でも6g/日であることを明らかにした。この結果に基づいて一次冷却水中のトリチウム濃度を1 TBq/cm3と設定し、冷却水放出事故時の環境影響が評価できるようにした。 また、過年度の研究から、冷却配管の大規模破断に伴って解放される冷却材(本研究では高温高圧の冷却水)のエンタルピーが、トリチウム等の可動性の放射性核種を閉じ込める障壁の健全性を損ないうる主要因になることが明らかになった。そこで平成27年度は、このエンタルピー解放による閉じ込め障壁の損傷リスクを抑制するため、昨年度の結果を踏まえて、高圧蒸気の凝縮が有効に働くよう核融合プラントの閉じ込め障壁及び影響緩和システムの改良を行った。その改良案をモデル化してMELCORによる熱水力解析を行った結果、核融合炉の真空容器外の冷却材流出事象(真空容器外LOCA)に対しては、ある程度の耐圧機能を持つボールト内に一冷却水主配管を格納し、LOCAによって流出する過圧蒸気を圧力抑制プールに逃がして凝縮させることが最も有効という結論を得た。この場合のケーススタディの一例では、破断後約5秒でボールト内圧は一時的に0.27 MPaに達する(0.17 MPaの圧力上昇)ものの、その後の内圧は0.15 MPa程度まで低下し閉じ込め障壁の健全性確保が可能である。真空容器内への冷却材侵入事象(真空容器内LOCA)に対しては、冷却配管破断面積と真空容器到達圧力の関係を明らかにした。破断面積が0.06 m2以下であれば、真空容器内LOCAに対しては影響緩和系が有効に働き、第一閉じ込め障壁となる真空容器の健全性を担保できることを示した。
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