研究課題/領域番号 |
25420899
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
朝倉 伸幸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, 研究主幹 (10222572)
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研究分担者 |
星野 一生 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門 六ヶ所核融合研究所, 研究員 (50513222)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 先進ダイバータ / 原型炉概念設計 / スーパーX型ダイバータ / ダイバータシミュレーション / 非接触プラズマ / 不純物ガス入射 / 国際情報交換 / 米国 |
研究実績の概要 |
平成26年度に雪結晶型ダイバータ(SFD)よりも工学設計の観点で有利と判断したスーパーX型ダイバータ(SXD)について、平成27年度は(トロイダルコイルと真空容器との間に設置する)インターリンクコイルの概念を検討すると共に、プラズマシミュレーションを進めた。 原型炉SlimCSを基にダイバータカセット、真空容器および中性子遮蔽を配置し、インターリンクコイルを2個まで減らした概念設計を検討した。インターリンクコイル電流をプラズマ電流(17MA)よりも少し大きい程度まで低減可能で有り、超伝導導体Nb3Alをコイル化(R&W)し、設置可能と思われる。 SONICコードを使用して不純物入射による放射損失の分布とデタッチプラズマの生成について評価を行った。その結果、主プラズマから500MWのプラズマ熱流を排出する条件では、(1)通常ダイバータと比較して磁力線が長くなるSXヌル点付近で放射損失の非常に強い領域が発生すると共に、(2)全体的にダイバータ板の上流で放射損失が増加し、(3)ダイバータ板全域で非接触プラズマとなる「フルデタッチ」状態を効果的に生成できることが明らかとなった。ダイバータ板表面では表面再結合による熱負荷が増加し、ピーク熱負荷は10MW/m2と通常ダイバータでの結果から2/3に低減されたが、工学的負担が大きい一方でプラズマ熱負荷制御への効果が小さいように思われる。本結果は、IAEA Fusion Energy Conference等の国際学会で口頭発表に選ばれるなど、原型炉における研究の進展が評価された。今後、ダイバータ形状などを検討とインターリンクコイルの工学検討を進める。 プラズマ閉じこめ性能が高く大きな加熱能力をもつ米国のDIII-Dトカマク実験に参加すると共に、国内の専門家と打合せを実施し上記の結果について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下3項目の検討を進めた。 目的1:原型炉における先進ダイバータ設計の課題を明らかにし、物理および工学分野における将来の開発要素を示す: 原型炉における先進ダイバータの設計に関する最も重要な工学的な制約(大電流を流すインターリンクコイルの設計や設置位置など)を明らかにし、それらを想定したSXD の概念設計を検討した。インターリンクコイルの超伝導導体についてR&Wに適したNb3Alを提案し、コイル設計を検討した。さらに、プラズマの立ち上げの際のコイル電流やストライク点の制御について検討を開始した。本年度の達成度は80%(最終目的への達成度は70%)であり、工学と平衡制御の検討を進める。 目的2:原型炉に相当する熱流・粒子流の条件下でダイバータ・シミュレーションを実施し、磁場配位およびダイバータ形状の検討を行う: 核融合出力3GWの原型炉を想定したSXDにおいて代表的なシミュレーションの結果を得た。通常のダイバータよりもトロイダル方向に磁力線が長くなるため計算メッシュはポロイダル間隔を1/2に縮め、大きな温度勾配に対応できるよう工夫した。放射損失の制御やダイバータ板への熱負荷低減に通常のダイバータよりも有利であることを示したが、それらの効果は工学的負担の増加と比較して小さいように思われる。本年度の達成度は60%(最終目的への達成度は50%)であり、さらに効率的に熱負荷を低減するためダイバータ形状などの検討が必要である。 目的3:先進ダイバータ概念についてトカマク装置で提案されている実験結果の検証を行う: DIII-DトカマクにおけるSFD実験に参加し、通常のダイバータプラズマとの相違点および磁場配位の制御手法について米国のダイバータ研究の専門家と議論を行った。本年度の達成度は70%である。一方、SXDにおける実験結果は世界的に不足しており課題である。(最終目的への達成度は40%)
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今後の研究の推進方策 |
引き続き3項目の推進方策と研究成果の発表を進める。 目的1:原型炉における先進ダイバータ設計の課題を明らかにし、物理および工学分野における将来の開発要素を示す: SXDの特に超伝導インターリンクコイルに関し工学検討を進め開発要素を明らかにする。プラズマ平衡配位の時間変化を短時間で計算するため高性能PCを購入し、SXDプラズマの立ち上げ・立ち下げシナリオの検討と必要なコイル性能を明らかにする。 目的2:原型炉に相当する熱流・粒子流の条件下でダイバータ・シミュレーションを実施し、磁場配位およびダイバータ形状の検討を行う: SONICコードを使用したダイバータプラズマのシミュレーションにより、効率的に非接触プラズマを生成する先進ダイバータの形状を示し、目的1に記した工学設計の修正・反映する。原型炉プラズマで変化が想定される物理パラメータ(拡散係数や密度など)の影響の大きさについて評価する。 目的3:先進ダイバータについてトカマク装置で進展した実験結果を検証する: 現在検討しているSXDにおける実験結果は世界的に早急に得られにくいことが予想されるため、近年進められたSFD実験結果との物理機構の共通点や相違点などについて総括を行う。検討されている新たな先進ダイバータ研究計画についても調査する。 研究成果の発表と研究会の開催: 進展した原型炉における先進ダイバータ(SXD)に関する検討成果を、国内学会(プラズマ核融合学会)および国際学会(2016年のPSI)で発表すると共に本研究結果を核融合炉におけるダイバータ設計への知見として専門誌へ投稿する。また、国内の専門家と打合せおよび成果報告を行う予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
プラズマ平衡の時間変化の計算には高速のPC(および関連ソフト類、データ保存用ディスクこみで約98万円)が必要であり、平成26年度に購入と本格的なプラズマ平衡の時間変化の計算を実施する計画であった。プラズマ平衡の時間変化の計算コードをより性能の向上すると思われる平成27年度に購入し整備することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
(1)プラズマ平衡の時間変化の計算のため新型PCおよびプログラムソフト(約80万円)を平成27年に購入する。(2)成果報告および調査のため国内会議とうち合わせ(5回)および国外研究所(1回)に出張が必要(約90万円)。
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