研究課題
平成26年度は、大型GAGG結晶を用いて波形観測の実験的検討を行った。H25年度に作成・準備した直径5cm長さ11.5cmのGAGGシンチレーターに反射材処理を行い、両端に高速読み出しタイプの光電子増倍管を接着して、GAGGシンチレーター内の発光事象の光信号を両側から読み出し、信号波形を500MHzでデジタル処理してPCを介して各イベント事に記録した。放射線源としてはガンマ線源として137-Cs,アルファ線源としてAmを用いた。まず、大型結晶特有の光信号の大きさの発光位置依存性を両線源を用いて調べて位置補正のための基礎データーとした。また、この際取得した信号波形を解析して、γ線およびα線の平均発光波形を作成し比較検討を行い、これらの間に信号の立上り時間・崩壊時間の違いが見られることをとらえた。これらの平均波形を基に、信号波形の特徴抽出法であるshape-Indicator法(SI法)によって入射粒子識別が可能であることを明らかにした。このγ/αの入射粒子識別能を内部崩壊事象に適用するため、外部放射線源を撤去し、鉛と銅による外部放射線遮蔽環境下でGAGG大型結晶に含まれる内部不純物による発光事象の識別を試みたところ、内部不純物(152-Gd)からのα線とウラン系列の不純物由来のα線ピークを明瞭に描出し、α線とγ線を明確に識別し弁別することが可能となった。この結果については、海外の研究会「DBD2015」において報告した。さらに、平成27年度に計画している中性子信号の識別に関して基礎的な実験を行い検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、申請時想定していた進度で順調に進行している。平成25年度に行った小結晶による実験結果を基に、本年度は大結晶を用いた実験的研究を行った。実験に際しては、宇宙線による影響を最小限に抑えるために、結晶(シンチレーター)上部に大型の宇宙線観測用検出器を設置し、その検出器が信号を発しない条件での信号採集を行うことを心がけた。その結果、小結晶と同じくα線とγ線の入射粒子識別を光電子増倍管の出力波形にShape-indicatorという手法を適用して、大結晶においても入射粒子識別が可能であることを確認した。また、放射線源を置かない背景事象の信号を採取し、結晶内部にわずかながら存在する放射性不純物による発光事象を観測し、それらの信号を基に発光事象がα線由来なのかγ線由来なのかを同定することが可能となった。これにより、GAGG大型結晶によってダブルベータ崩壊事象の観測実験を行う際の内部バックグラウンドの識別がより確実に行えることとなった。これらの結果は海外での研究会(DBD2015)で詳細を報告した。このように、平成26年度は概ね当初の計画通りに研究が進行し、H27年度の研究を進めるめどが付いたと考える。
申請時の計画では、平成27年度は最終年度であり本研究の取りまとめ時期でもある。平成27年度は、「GSO結晶やGAGG結晶が中性子と相互作用してどのような信号を形成するのか?」「それらの信号は他の入射粒子とどのような違いがあるのか?」を明らかにする計画である。中性子線源を用いて外部から中性子を照射し、その際の信号と他の線源を照射した時の信号にどのような特徴違いがあるのかを詳しく調べる。その際、信号の大きさや信号波形の形状の違いについても、これまでの結果と合わせて詳しく検討する。また、最終年度として研究を取りまとめ、本研究結果を公表する。
信号波形取り込み装置(FADC)の補強が間に合わなかったため。
信号波形取り込み装置を補強して更に研究を進める。
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Physics Procedia
巻: 61 ページ: 283-288
0.1051/epjconf/20146608008
EPJ Web of Conferences
巻: 66 ページ: 08008
10.1051/epjconf/20146608008