研究課題/領域番号 |
25420906
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三澤 毅 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (70219616)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核物質 / 中性子 / ガンマ線 / 核セキュリティ / 雑音解析 |
研究実績の概要 |
ウラン等の核物質の量を測定することは、核燃料の臨界安全を確保するためばかりではなく、コンテナやトランク等に違法に隠匿された核爆弾の原料となり得る核物質を探知するという核テロを防ぐ核セキュリティ対策としても重要な課題である。本研究においては核物質の探知・定量方法として、パルス中性子を用いた遅発中性子雑音解析法という新しい測定解析手法を提案し、そのための核燃料を用いた基礎実験と解析と行うことを通じて本解析法の有効性と問題点を明らかにし、さらに新しい測定手法を開発することを目的としている。 当初の計画では本年度に京都大学臨界実験装置において濃縮ウランとパルス状中性子発生加速器を用いて核物質探知の基礎実験を行う予定であったが、原子力規制庁による研究炉の新規制基準の審査が長引いているためこれらの実験を行うことができなかった。そこで代替の実験として今年度は天然ウランとCf中性子源を用いて未臨界体系での実験を行った。従来の中性子計測による雑音解析では実効増倍率が約0.5という非常に深い未臨界状態であるにも関わらず核物質量の増減に関する情報を取得できることが判った。このような深い未臨界状態での雑音解析の研究はこれまで例がない。さらに今回は測定精度向上のために新たにガンマ線での計測法として分散法と共分散法を用いた実験手法を併用した。その結果、2MeV以上のガンマ線のエネルギーの信号のみの時系列解析を行うことにより、体系内での核分裂連鎖反応に関する情報を取得できることが判った。中性子計測の場合と同様に、このような深い未臨界状態でのガンマ線雑音解析は世界で初めての研究成果である。これらの成果を遅発中性子雑音解析法と組み合わせることにより、未臨界度の測定精度を向上させること、すなわち核物質量を精度良く推定することを達成できる見込があることが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では本年度に京都大学臨界実験装置において高濃縮ウランとパルス状中性子発生加速器を組み合わせた核物質探知法開発のための実験を行う予定であったが、原子力規制庁による研究炉の新規制基準の審査が長引いており、平成26年3月から京都大学臨界集合体実験装置の運転が停止しているため、これらの実験を行うことができなかった。 しかし、この間に天然ウランとCf中性子源を用いた未臨界体系実験を実施することにより、中性子とガンマ線の雑音解析法の実験と解析を行うことができ、特にガンマ線計測法の有効性を新たに確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
原子力規制庁による京都大学臨界集合体実験装置の新規制基準の審査については平成28年4月に原子力規制委員会にて審査書が了承され、2016年夏頃には運転再開できる目処が立った。運転再開後、できるだけ早期に当初予定していた高濃縮ウランとパルス状中性子発生加速器を組み合わせた遅発中性子領域の中性子とガンマ線の雑音解析と中性子源増倍法の実験を実施する予定で、これにより本研究の当初の目的を達成できる見込である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は原子力規制庁による研究炉の新規制基準の審査が長引いたため、臨界実験装置およびパルス状中性子発生装置が使用できなく、当初計画していた研究予定を変更せざるを得なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度中に原子力規制庁により新規制基準の審査が終了する見込になり、夏以降に高濃縮ウランとパルス状中性子発生装置を用いた実験を再開できる予定である。そのため、これらの実験を展開するための消耗品等を購入して研究を遂行する予定である。
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