研究課題
基盤研究(C)
軽水炉や核融合炉の材料は、放射線の照射によって劣化する。軽水炉保全の高度化や核融合炉材料の開発には、こうした材料劣化を予測する技術が必要になる。材料劣化の予測には、現在、材料試験炉やイオン加速器等、代替の照射場を使った「加速照射」が行わえれているが、果たしてどの程度加速されているのか、しかしながら、他の工学一般で言う、いわゆる「加速係数」が明らかになっていない。本研究では、各種材料シミュレーション手法を使って材料照射損傷のマルチスケールモデリングを行い、材料劣化の加速係数を導出するための検討を行う。今年度は、分子動力学法等を使って導出された欠陥反応のエネルギー論を応用し、反応速度論ベースで照射欠陥蓄積プロセスを定量し、欠陥蓄積過程、特に、スエリングについて調べた。同時に、照射場を特徴づける中性子エネルギースペクトルからはじき出し損傷速度dpa/sを導出し、各照射場の定量化を行った。対象の照射場は、JMTR、HFIR、核融合炉(14MeV中性子)、KUR、JOYO(Outer wall部とFuel area部)である。その結果、加速係数を検討するのに重要な、以下の知見を得た。・核融合炉やJOYO(Outer wall部)を除くと、中性子全フラックス(>0.1MeV)とdpa/sはほぼ1本の直線に乗る。スペクトルの硬い核融合炉やJOYO(Outer wall部)については、その傾向からはずれ、高めのdpa/sになる。・dpa/sや照射温度を変化させて系統的にスエリング量を反応速度論解析により評価したところ、スエリング量は照射温度に対してピークをもち、また、高dpa/sほどスエリングピークは高温側へシフトする傾向がみられた。この傾向は、実験的な評価と定性的に一致する。
2: おおむね順調に進展している
反応速度論解析により、ボイドスエリングに関する照射相関則が得られそうであり、順調に成果が得られている。いかに定量化し、加速係数の形に表現していくかについては、今後の理論的検討が必要である。また、系統的な照射データの整備については、順次文献等を使って実施している。
系統的な実験データの取得については、生のデータがなかなか入手できない分野であり、実際調査してみたが、今後も相応の困難が予想される。統計的に意味のあるデータをそろえることを目的にするのではなく、本研究の理論評価で得られる相関式もしくは加速係数等の検証に実験データを利用する程度にしておくことが意味のある研究になると思われる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (26件)
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