研究課題/領域番号 |
25420908
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 崇 大阪大学, ラジオアイソトープ総合センター, 教授 (90323336)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ウラン(V) / アクチノイド / 異性体 / 平衡反応 |
研究概要 |
8配位構造をもつ+4価ウラン錯体を合成した。この錯体は、12面体構造および4方逆プリズム構造の2つの異性体混合物であることを各種スペクトル法により明らかにした。また、4方逆プリズム構造の錯体は、その異性体のみ単離することに成功した。+4価のウラン錯体を1電子酸化することで+5価ウラン錯体を合成した。酸化後、短時間で結晶を得た場合は、4方逆プリズム構造の錯体のみを単離できた。一方、酸化の後、10日ほど室温で放置してから、結晶化した場合は、12面体構造の錯体のみが単離された。これら+5価錯体は、固体状態で空気中に安定であることを確認した。単結晶X線分析の結果、+5価のウラン錯体の両異性体ともに対応する+4価の錯体と同形構造をとっていることが分かった。+5価ウランと酸素原子間の結合距離は、+4価の錯体に比べて約0.1オングストローム短くなっていた。サイクリックボルタンメトリーの結果、U(V/IV)の酸化還元電位は、12面体構造と4方逆プリズム構造で異なることが分かった。+4価ウラン錯体の異性体を溶液中で放置すると両異性体間での変換反応がおこり、最終的に平衡状態になることが分かった。その平衡定数を算出したところ、+4価ウラン錯体では4方逆プリズム構造のほうが安定であることが分かった。次に+5価ウラン錯体でも同様にそれぞれの異性体を放置すると両異性体の平衡状態になることが分かった。その平衡定数から+5価ウラン錯体では12面体構造のほうが安定であることが分かった。+4価および+5価ウラン錯体では同形構造で、安定な異性体構造が異なることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固体状態で空気中安定な+5価ウラン錯体を合成し、それらの構造を特定できた。同形の+4価、+5価ウラン錯体において両異性体の酸化還元挙動の特定、両異性体間の変換反応を追跡し、安定構造がウランの酸化数で変化することを定量的に調べることができたことから、本研究は順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
得られた+4価および+5価のウラン錯体の分光学的性質を明らかにする。これらの錯体は、磁性をもつことを確認している。そこで、得られた錯体の磁気的な性質を調べることによって+4価ウランおよび+5価ウランの特徴、中心金属イオンの配位構造の違いによる性質変化を特定することを計画している。また、8配位以外の配位数をもつ錯体についても配位子のスクリーニングを行い、適切な合成条件を設定し、化合物を単離したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、グローブボックスの不活性ガス循環精製装置の業者を精査し、より安い価格で同等の製品を購入できたためである。その他の項目については、論文投稿のための英文校正費として使用した。 26年度以降の研究に必要な物品費として使用する予定である。
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