研究課題/領域番号 |
25420910
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
香西 直文 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (80354877)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微生物 / 酵母 / ゾウリムシ / リン酸塩化 / 放射性核種移行挙動 / アクチノイド / 擬似コロイド |
研究実績の概要 |
本研究は、環境微生物によって溶存形態のアクチノイドがリン酸塩として固定化される機構を解明することを目的とする。バクテリア、菌類(酵母)、及びそれらを捕食する原生動物(ミドリゾウリムシ)を対象として、1)微生物がアクチノイドをリン酸塩化する機構、また、2)餌となる微生物と捕食生物という単純な生態系(食物連鎖系)における微生物とアクチノイドとの相互影響、及び捕食生物とアクチノイドの相互影響を調べる。 研究2年度は、1)については、酵母細胞が重元素(3価のアクチノイドの模擬元素として用いられるEu(III))をリン酸塩化するときに分泌するリン、有機物を分析した。Euを含む水溶液に酵母細胞を入れると、細胞の表面にナノサイズのEuリン酸塩が形成される。このナノ粒子は、無機的条件で生成するEuリン酸塩とは形状が異なるので、生物的作用がナノ粒子形成に関与していると考えられる。酵母細胞を水溶液に入れると、リンを含む成分としてモノリン酸イオン及びリンを含まない多種類の水溶性有機物が酵母から分泌された。細胞から放出されたリン酸イオンの濃度にEuの有無による違いはなかったが、ある有機物はEuがある場合に多く分泌されることがわかった。この有機物は、液相のpHが低い場合も多く分泌されたので、化学的刺激に対して分泌される可能性が考えられる。 2)については、ミドリゾウリムシから分泌される巨大な有機物とEu及びUイオンが結合し、環境水中を移行しやすい形態である擬似コロイドとなることがわかった。分子量の大きいこの有機物をサイズ排除クロマトグラフィーで分析したところ、分子量20万程度の有機物が結合してさらに大きなサイズとなっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
有機物の分析方法の選定に時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
1)については、酵母が分泌する有機物と、アクチノイドのリン酸塩化の関係を検討する。アクチノイド存在下で分泌量が多くなる有機物を回収し、その特性を評価するとともに、その有機物がアクチノイドのリン酸塩化に及ぼす影響について検討する。また、リン酸塩化によって酵母に固定されたアクチノイドの再溶解挙動についても検討する。 2)については、まずゾウリムシ由来の巨大有機物の特性を評価するため、アフィニティークロマトグラフィーを用いて分析する。分離した巨大有機物とEuなどとの錯体形成について検討する。食物連鎖系における研究では、これまでの研究で、餌となる酵母細胞に形成したEu及びUのリン酸塩を細胞ごとゾウリムシが摂取したとき、Eu及びUはリン酸塩のまま排出され、ゾウリムシの培養によって形成される有機質膜沈殿中にリン酸塩として析出することを見出した。この有機質膜沈殿の特性はこれまで全く検討されていないので、沈殿形成機構を中心に検討する。
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