本研究では、基本的相互作用であるガス標的との1回衝突による解離・荷電変換断面積に関して、クラスターイオン特有の立体構造に起因する衝突角度(配向)などを詳細に考慮した測定を行い、反応機構への構造の寄与を明らかにすることを目的とする。H25年度は、タンデム加速器荷電変換システムを利用して、構造の異なるクラスターイオンについて解離・荷電変換断面積を比較し、H26年度はガスターゲットとクーロン爆発法を組み合わせた配向測定システムの構築を行う。さらに、H27年度は、配向と解離断面積を同時に測定し、これらの結果から断面積への配向の影響を明らかにする。 H25年度は、幾何学的構造の異なるクラスターイオンの解離・荷電変換断面積(それぞれσd、σp)を、タンデム加速器を利用した実験から求め、構造の影響を強く受けると考えられるσdについて比較した。その結果、鎖状の炭素クラスターが加速過程で配向している可能性を示唆するデータが得られた。 H26年度は、ガスターゲットとクーロン爆発法を組み合わせた配向測定システムの構築を行った。特にガス標的としてパルスガスジェット方式及び精密微少流量バルブを用いた一定流量方式の2方式について構築し、予備実験を行い、一定流量方式を基にガス排気システムの改造で対応することとした。 H27年度は、配向測定システムを用いて、ターゲットのガス種やその圧力を変化させて入射クラスターイオンの配向測定を行った。本実験では、H26年に構築した一定流量方式のガスターゲットを用いる予定であったが、ターゲットのガス密度を精度よく測定するためのイオンビームを用いた予備実験がマシンタイムの不足によりできなかったため、ガス密度が既知のタンデム加速器内のガス荷電変換部をガスターゲットとして利用した。その結果、解離断面積の異なるガスターゲットを通過した2分子クラスターの配向に違いが観測された。
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