研究課題/領域番号 |
25420913
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
初川 雄一 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (40343917)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Tc-99m / Mo-99 / ジェネレータ / 加速器中性子 / 反跳エネルギー / ナノ粒子ターゲット |
研究実績の概要 |
加速器中性子による核反応により生じる99Moは反跳により約140keVの運動エネルギーを得る。これはモリブデン金属中では約40nmの飛程に相当する。そこでナノ粒子を加速器中性子照射ターゲットとして照射し反跳を受けた99Moを高い比放射能で回収しこれを用いた99Mo/99mTcジェネレータの作成を目指した。平均直径70nmのモリブデン金属ナノ粒子を塩化カリウム粉末と混合し加圧成形したものを照射ターゲットとして原子力機構・東海研究所に設置されているFNS施設において14MeV中性子照射を行った。照射ターゲットを超純水で溶解後、遠心分離によりモリブデン金属ナノ粒子と溶解液の分離を行った。 核反応により生じた99Moの一部は金属モリブデンナノ粒子から溶液中に移動し遠心法で分離した水溶液中に存在している。分離した水溶液をアルミナカラムに注ぎ溶液中の99Moをアルミナに吸着させ、これを99Mo/99mTcジェネレータとした。このカラムに生理食塩水を注ぐと99Moは溶離されないが壊変によって生じた99mTcはアルミナに吸着しないため生理食塩水中に溶離されることになる。約25時間後に99Mo-99mTc は放射平衡に達するため、1日に一回ずつ生理食塩水を注ぐことにより溶離液のガンマ線測定を行い99mTcの定量を行った。得られたジェネレータの性能を確認し、モリブデンターゲットからの回収率などを測定し実験により得られたジェネレータの評価を行った。得られた結果をNAMLS、Pacifichem2015などの国際会議において発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平均直径70nmのモリブデン金属ナノ粒子を塩化カリウム粉末と混合し加圧成形したものを照射ターゲットとして日本原子力研究開発機構・原子力科学研究所に設置されているFNS施設において6時間に亘って14MeV中性子照射を行った。照射ターゲットをSEMにおいて観察することにより、モリブデンナノ粒子が適当に分散していることを確認した。照射後にモリブデン/塩化カリウムターゲットを超純水で溶解したのち、遠心分離装置により2000rpmでモリブデン金属ナノ粒子と溶解液の分離を行った。 核反応により生じた99Moの一部は金属モリブデンナノ粒子から溶液中に移動し遠心法で分離した水溶液中に存在している。分離した水溶液を市販のアルミナカラム(280㎎ 50-300μm)に注ぎ溶液中の99Moイオンをアルミナに吸着させることにより99Mo/99mTcジェネレータを作成した。このカラムに生理食塩水を注ぐと99Moは溶離されないが壊変によって生じた99mTcはアルミナに吸着せず生理食塩水中に溶離されることになる。約25時間後に99Mo-99mTc は放射平衡に達するため、1日に一回ずつ生理食塩水を注ぐことにより溶離液のガンマ線測定を行い99mTcの定量を行った。この結果99Mo/99mTcジェネレータから溶離された99mTcの放射線強度は99Moの半減期である66時間で減衰が確認され、これにより99Mo/99mTcジェネレータとして機能していることが示された。つまりジェネレータ中に99Moが保持され99Moから生成した99mTcのみが溶出されて99Mo/99mTcジェネレータが作成されたことを示している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究を通して加速器中性子核反応により生成した99Moを高い比放射能で分離しこれを基にした99Mo/99mTcジェネレータを試験的に作成することに成功した。 今後スケールアップすることにより実用化の可能性が得られた。今後実用化に向けての課題点は濃縮係数の向上を図ることが求められる。さらに並行して行った、同じく加速器中性子核反応による生成核種の反跳を利用したRI標識金属内包フラーレン生成にも応用できることが分かった。今後ナノメディシンとして期待されているRI標識金属内包フラーレン研究への発展性が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画を効率的に進めることができ、濃縮同位体購入費(物品費)を節約できたため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初計画に追加して次年度に開催される国際会議(NRC2016・フィンランド)にて補助事業で得た知見を発表し、海外研究者との議論を通じて論文の完成度を高め補助事業の目的をより精緻に達成することを図る。
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