研究課題/領域番号 |
25420921
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
西村 顕 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60345999)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光触媒 / 二酸化炭素 / 金属担持 / 可視光吸収 |
研究実績の概要 |
近年,地球温暖化や化石燃料枯渇といった問題が深刻化している.本研究ではこの2つの課題を解決するために,光触媒(TiO2)を用いてCO2の燃料種(CO,CH4等)への改質を行う.しかしながら,TiO2のCO2改質性能は低く,実用化にはさらなる性能向上が必要である. そこで本研究では,TiO2に金属を担持させることで電荷分離促進と可視光応答化による性能向上を目指した.金属担持方法にはゾルゲル・ディップコーティング法とパルスアークプラズマガンによるコーティング方法を用いて,金属担持TiO2薄膜を作製した.ゾルゲル・ディップコーティング法では,TiO2ゾル溶液中に各金属(Fe,Cu,Pd)を投入して,金属担持TiO2薄膜を網目状繊維にコーティングした.またパルスアークプラズマガンでは,ゾルゲル・ディップコーティング法で網目状繊維にコーティングしたTiO2薄膜にFeを担持した.これらの方法でコーティングを行った網目状繊維基材1枚と網目状繊維を透過する光の利用を狙った重ね合わせによる2枚の配置条件でCO2改質性能を比較した.本研究で提案する方法で作製した金属担持TiO2薄膜のCO2改質性能評価,および基材を重ね合わせることによるCO2改質性能向上の効果の検証を研究目的として,SEM,EPMAによる表面性状分析およびCO2改質実験による評価を行った. 本研究ではゾルゲル・ディップコーティング法で網目状繊維にコーティングしたTiO2薄膜にFeを担持した条件(重ね合わせなし)で最高性能が得られた.パルスアークプラズマガンによるコーティングや重ね合わせによる性能向上は十分に得られなかったが,両面コーティングによる性能向上や24hまでのCO生成速度の増加が認められたため,今後網目状繊維へのコーティング方法を工夫した上で配置を検討することで,短い実験時間での性能向上が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
優れた光透過性を有する網目状繊維への金属担持光触媒作製方法としてゾルゲル・ディップコーティング法とパルスアークプラズマガン法の二通りを採用し,作製光触媒をSEM,EPMAの分析機器とCO2改質実験で評価を行った.また,作製した光触媒を2サンプル重ね合わせた場合のCO2改質実験を行いその性能評価を行った.これらの取り組みは当初予定した研究計画通りであり,さらにパルスアークプラズマガン法にも取り組んだのは当初計画を上回る成果である. ただし,マイナス面としては,CO2改質実験で得られた燃料濃度が最高で1000ppmV程度であり,既往研究と同程度もしくは若干高い程度にとどまっており,当初想定していた高性能は得られていない.また,作製した光触媒を2サンプル重ね合わせた場合のCO2改質性能が1サンプルの場合よりも上回る場合もあれば,そうでない場合もあり,当初期待した効果が得られるような普遍的な条件を見出すには至っていない.しかし,まだ研究機関としてはもう1年あるため,本課題を解決するには十分な期間を有する. 以上のことを総合的に判断して,本研究の現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の主な研究課題としては,以下のものが挙げられる. 1.金属担持条件の検討,2.重ね合わせの効果が得られる条件の抽出,3.還元剤の影響評価 1.については,これまで金属種としてはFe,Cu,Pdについて,また担持方法としてはゾルゲル・ディップコーティング法とパルスアークプラズマガン法を検討してきたが,担持量や担持状態について最適条件があることが推察されており,また本研究ではまだ最適条件を見いだせていない.したがって,今後金属種および担持方法について最適化を図る予定である. 2.については,これまで作製光触媒を2サンプル重ね合わせてCO2改質実験を行ってきたが,十分な性能向上効果が得られておらず,またその理由として2サンプル間の電子の移動性能が不十分なことや生成燃料の滞留による逆反応の発生が予想されている.したがて,光触媒のコーティング方法や重ね合わせた際のサンプルの配置等を変化させて,重ね合わせの効果が得られる条件を抽出する予定である. 3.については,当初研究計画調書に記載した還元剤としてH2をH2Oの代わりに用い,プロトン生成量増加による還元反応促進を目指した検討を行う予定である.CO2とのモル比や装置内充填圧力、さらには光触媒の担持金属種の影響などを調査する.
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