研究課題/領域番号 |
25420922
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
杉原 英治 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10359854)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 配電系統 / 太陽光発電 |
研究実績の概要 |
本研究では,住宅用PVの大量連系された高低圧配電系統において,間欠的なPV出力変動を積極的に活用して,PVによる配電線電圧上昇問題とEV急速充電による電圧降下・電流容量制約の問題を同時に解決するような新しい配電ネットワークの電圧・電流マネジメント手法の開発を目指している。特にEV急速充電の充電地点や台数は不確実性が大きいことから,様々なシミュレーションケースを想定した上で最大充電可能台数や最小充電可能台数としてロバストな充電可能量を評価する。 平成25年度は,主に配電系統のモデル構築の観点から研究を進めており,特に住宅用PVと普通充電器の連系する詳細な低圧配電系統と,急速充電器の連系する高圧配電系統を同時に考慮した高低圧配電系統モデルを構築した。さらに,配電用変電所の送出電圧の調整には現在一般的に用いられている線路電圧低下補償(LDC)方式を想定し,太陽光発電の大量導入を想定したLDCパラメータ最適決定手法を開発した。本手法を構築した高低圧配電系統モデルに適用した結果,様々な空間的なPV導入分布ケースにおいてPV導入率が20~25%程度改善することを評価した。 平成26年度は,まず前年度に構築した高低圧配電系統モデルにおいて,蓄電池等に併設されるインバータからの無効電力供給による電圧上昇抑制効果について定量的に評価した結果,力率95%程度で十分な電圧上昇抑制効果が得られることを示した。この上で,適切なインバータ容量について考察するとともに,特に高圧配電線フィーダの末端に位置する低圧系統からの無効電力供給が電圧調整に効果的であることを明らかにした。また,高圧配電線に設置する電圧制御機器としてSVRをモデル化し,電圧上昇抑制効果を評価した。さらに,PV発電出力のモデル化として,単一地点の日射強度の実測データから面的なならし効果を考慮したPV発電出力パターンを生成し,電圧上昇抑制効果を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度において,既に高低圧配電系統モデルの構築および潮流計算手法の開発を完了しており,平成26年度には,需要家側におけるインバータ力率制御モデルの構築や高圧配電線用の電圧制御機器(SVR)のモデル化,さらには面的ならし効果を考慮したPV発電出力パターンの生成や1軒毎の住宅用エネルギー需要データ等のシミュレーション評価用データの整備を完了し,それらを組み込んだ電圧上昇抑制効果の評価も開始している。また,それらの研究成果について国内学会で論文発表(2件)を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として,平成25年度に構築した高低圧配電系統モデルおよび潮流計算手法,ならびに平成26年度に開発したインバータ力率制御モデル,電圧制御機器(SVR)モデル,さらには様々なPV発電出力パターンを用いて,最終年度である平成27年度は,最終目的としている配電系統の電圧・電流制約下におけるEV急速充電の最大可能/最小必要台数の評価を実施する。特に,様々なPV発電パターンに対して定量的に評価を行うことにより,開発したEV急速充電台数評価手法の妥当性を検証するとともに,シミュレーション結果のロバスト性についてシステム工学的な観点から考察し,一般的な知見の抽出に取り組む。さらに,PVおよび蓄電池に併設されるバッテリーを活用して,最大充電可能台数を拡大するために必要な無効電力出力についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため
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次年度使用額の使用計画 |
必要に応じて研究費を執行したため,当初の見込み額と執行額には若干の差が生じたものの,研究計画に変更はなく,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく。
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