研究課題/領域番号 |
25420924
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
玉城 史朗 琉球大学, 工学部, 教授 (80163666)
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研究分担者 |
鈴木 正己 琉球大学, 工学部, 教授 (30171250)
天久 和正 琉球大学, 工学部, 准教授 (40284955)
平田 哲兵 琉球大学, 工学部, 研究員 (40518007)
長田 康敬 琉球大学, 工学部, 教授 (50208021)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 小型風車 / ロバスト適応ピッチ制御御 / 自律型失速制御 / 過回転防止制御 / ブレードリンク機構 / 出力安定化 / 電磁ブレーキ / コンパクトセンシング |
研究実績の概要 |
本研究では、風速15m/s-25m/sの強風域でも運転可能な小型風力発電システム(自律型過回転抑制機構風力発電システム)の開発を目指している。ここでは、ブレードの過回転を防止するために,回転が上昇すると、ブレードの遠心力を利用した逆ピッチ制御システムの開発を行っている。また、変動する風速に対し,発電出力はその3乗に比例するが、出力変動を抑制するために,可変電磁ブレーキを導入し回転数を一定とする制御則の開発も行っった。以下の昨年度までの実績をまとめる。 上記研究目的を達成するために昨年度は以下の研究内容を遂行した。 ブレード回転力の変化に伴う失速・回復機構メカニズムの解析:本研究で開発したブレード回転力(遠心力)の変化に伴う失速・回復機構の解析を行う。具体的には、風速及び回転力に伴なったブレードに作用する揚力及び抗力の重心(作用点)に着目し、スラスト力及び回転抗力の運動方程式を導出した。それと共に、失速・回復機構の運動方程式(バネ・ダンパ方程式)を連立させて力学モデルを導出し、数値シミュレーションを行うことにより現象を解析的に把握した。また、失速・回復の際、特に回復域では失速時の際バネ-ダンパに保存されたポテンシャルエネルギーが解放され、その結果、ハブ上面に衝撃を加える衝突現象を確認した。その衝撃は即座にブレード(ハブで片持ちばねとして支持されている)に作用するため、これをある程度緩和する方策を見い題した。 回転変動防止を目的とした電磁ブレーキによる出力安定化制御:変動する風速に対する発電出力は変動が増大する。ここでは、入力変動に対し出力変動をある指定した範囲内で制御する、内部モデル原理により出力抑制制御を設計し数値シミュレーションで、その有効性を確認した。 実績として掲載論文3件、国際会議5件である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の結果と、26年度の成果を踏まえて自己評価を行う。25年度では、ハブ直径60cm,ブレード直径3m(有効エネルギー回収面積((1.5-0.3)2×π=4.523m2)、実効出力2.Wの「自律型過回転抑制小型風車」のプロトタイプを作成した。平成26年では、そのプロトタイプを用いて、三次元赤外線カメラを用いたブレード失速・回復状態の動的計測を行い、その結果に基づき強制的に失速・回復動作を行わせたときの回復現象(減衰振動)のデータを取得することが可能となった。また、高速度カメラを用いて、ブレード先端の失速・回復状態を可視化した。その結果、回復状態においては3枚のブレードを同期的に集約しているシリンダがハブ内上面に衝撃を与える事が判明した。この衝撃力はブレードの疲労破壊を生じせしめる為、衝撃緩衝剤としてシリコンゴムを用い、ある程度の衝撃の吸収が可能となった。しかし、衝撃の原因を解析するため、それらの力学モデルを構成した。ここでは、シリンダがシリコンゴムを装着したハブ上面に衝突する時のモデル(粘弾性モデル)をMaxwellモデルで近似し、全体のダイナミクスに取り込んだ。今後はモデルの精度向上を目指し、衝撃を最小限に抑制する失速・回復制御を実現することを目的とする。 本研究のもう一つの目的は、変動する風速に対し発電出力を指定した範囲内で抑制する出力制御方式を実現することである。ここでは、最初のアプローチとして、ブレードが過回転になったとき、電磁ブレーキが作動し、突出した出力を抑制するというレギュレータの設計・開発を行った。そして、数値シミレーションによりその有効性を「確認したので、その結果を今年度実機に装着し性能確認を行う。 以上の二つの設定課題を解決する方策を見出したので、今後は、まず、実機の1/3モデルでの実験を行い、結果をフィードバックして完成形の開発を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、「強風域でも運転可能な風力発電システムの開発」を目標としている。今年度は最終年度であるため過去二年間の結果を踏まえて、最終目標を実現するために設計、数値シミュレーション、実験を繰り返し最終目標に到達する次第である。ここでは、以上を踏まえ、以下の課題を克服し完成形を目指す。まず、風車ブレードに作用する揚力、抗力からスラスト力及び回転力を翼素運動理論を用いて解析を行う。翼素運動量理論は2次元翼の揚力係数CPと抗力係数CDを使用して風車ブレードの性能を計算するため、風車ブレードに使用する翼型は2次元での実験データが豊富なNACA翼を使用し設計を行うブレード廻りの空気の流れの特徴としてブレードへの流入速度やピッチ角が風速と風車の回転数によって大きく変化することがあげられる。そこでブレードへ流入する流速を変化させたとき、流れの数値解析(Computer Flued Dynamics )を実行し、ブレードに作用する流体的なスラスト力(ピッチ角に変動を及ぼす力)とブレード回転力を算出する。具体的にはスパン方向に風車を一定間隔で要素分割を行い、その時の翼の断面形状における様々な風速で解析を行い、風車の低回転時や低風速時の風車廻りの流れを予測する。それと共に、ブレードに作用するスラスト力と回転力を失速・回復メカニズムの入力と設定し、バネ-ダンパリンク機構と練成させ、詳細な数値シミュレーションを行う。それと共に、現在製作中である実機システムの1/3モデルに対し、数値シミュレーションで得られた最適なバネ定数、ダンパ係数を実験モデルに適用し風洞実験を行う。また、出力安定化のための直流型ブラシレスモータを負荷ブレーキとして組み込む。最終的には、自律型ピッチ失速制御と、電磁式ブレーキを用いた「自律型過回転抑制機構風力発電システム」の実用化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
まず、物品に関しては特に高価な設備備品費を活用することはなかった。その理由として、センサやコントローラとして導入する専用計測器や制御機は非常に高価であるため、我々は1万円程度で導入可能な計測・制御用ワンボードマイコンを組み込み代用した。特に、このようなマイコンは専用機器に比較して精度的にも充分な性能を有しており、我々の選択は妥当であると思われる。また、現在、実機の1/3スケールの風力発電システムを製作中であるが、この製作材料費として電子部品、機械部品を購入した。また、長さ40cmのブレードを三枚(ひと組)購入した。以上、差額は最終年度である今年度に活用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、まず、失速・回復機構を集約するハブの製作費を20万円程度見積もっている。また、電磁ブレーキとして使用するDCブラシレスモータの購入を予定している(15万程度)。また、ブレード回転時に失速制御の挙動を確認するための高速度カメラレンタル料として25万円を見積もっている。その他、謝金、消耗品としてさらに、風力発電機製作費に係る電子・機械部品材料費を20万円程度と計画している。さらには、学会発表(国際会議)3件、論文掲載料3編として計40万円を計上している。その他、実験フィールド借料として24万円を見積もっている。
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