研究課題/領域番号 |
25420927
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研究機関 | 新潟工科大学 |
研究代表者 |
吉本 康文 新潟工科大学, 工学部, 教授 (90167023)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ディーゼル機関 / 二元燃料 / 天然ガス / ディーゼル燃焼 / 過給 / 正味熱効率 / 排ガス特性 / EGR |
研究実績の概要 |
本研究は、圧縮天然ガス(CNG)を吸気管に供給し、ディーゼル燃料を燃焼室内に噴射して着火、燃焼を行う方式の二元燃料ディーゼル機関の燃焼特性改善を目的とする。燃焼特性改善の要件として、①排気再循環(EGR)の適用、②過給の採用、③含酸素燃料の着火燃料への適用、④DME(ジメチルエーテル)のCNGへの予混合、を取り上げ、最適燃焼条件解明を最終目標とする。本年度は上記要件のうち、②過給の採用、および③含酸素燃料の着火燃料への適用に関する一連の実験を実施した。また、①排気再循環(EGR)の適用、を実施するために実験装置を改造した。 はじめに、ルーツブロワ式スーパーチャージャーによる機械式過給の影響を調べた。着火燃料には原料油が異なる3種のバイオディーゼル(菜種油メチルエステル:RME、大豆油チルエステル:SME、ココナッツ油チルエステル:CME)、およびCMEと1-ブタノールとの混合燃料(CME:1-ブタノール=60:40;質量比率)を使用した。過給圧、CNG供給比率、および着火燃料の種別が機関性能、排ガス特性、燃焼特性に及ぼす影響を、基準燃料であるJIS2号軽油の場合と比較した。その結果、通常のディーゼル運転では着火燃料の種別によらず、過給圧を高く設定する(130~140 kPa)ことで高負荷運転領域の正味熱効率(BTE)および smokeエミッションが顕著に改善した。一方、CNGのエネルギー供給比率を50%以上にするとBTEおよびTHCは悪化することがわかった。 つぎに、EGRを行うための実験装置改造を試みた。排気管を分岐し、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)およびEGRクーラーを介して、排ガスの一部を過給機上流側に還流する方式のEGRシステムを構築した。予備実験の結果、吸気の酸素濃度が低下(EGR率が増加)するにつれてNOx濃度が顕著に低下することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、本研究では二元燃料ディーゼル機関の燃焼特性を改善するための要件として、①排気再循環(EGR)の適用、②過給の採用、③含酸素燃料の着火燃料への適用、④DME(ジメチルエーテル)のCNG(天然ガス)への予混合、を取り上げ、最適燃焼条件を解明することを最終目標としている。昨年度は、目標達成がもっとも困難であると予想された②過給の採用、を優先的に取り上げ、実験システムを構築するとともに一連の予備的実験を行った。 本年度は、過給を適用した二元燃料運転に対して③含酸素燃料を着火燃料に適用し、系統的な実験を実施した。一連の研究の結果、原料油が異なる3種のバイオディーゼル(RME、SME、CME)は、軽油燃料とおおむね類似した二元燃料ディーゼル燃焼特性を示すことが明らかになった。一方、CMEと1-ブタノールとの混合燃料(CMEB)を用いた場合では、過給により着火遅れが著しく改善するという有用な知見を得ることができた。また、排ガスの一部を過給機上流側に還流する方式のEGRシステムを予定どおり構築することができた。通常のディーゼル運転による予備的実験を行った結果、所要のNOx低減効果を有していることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
二元燃料ディーゼル機関から排出されるNOxを低減するためにEGR(排気再循環)を適用する。CNG供給比率の増加とともに着火遅れは漸増し、これにともない予混合的燃焼が活性化する。このため、NOx濃度は通常のディーゼル運転に比べ相対的に高い。そこで、NOx低減対策の基本技術であるEGRを適用する。この際、過給機前段に排気を還流する方式(Low Pressure EGR)を採用する。実験は定格出力から1/4出力まで変化させ、吸気の酸素濃度(EGR率)を21~17%程度まで変化させる。CNG供給比率は0%(通常運転)から安定運転限界まで広範囲に変化させ、着火燃料には3種のバイオ燃料(RME、SME、およびCME)、ならびにJIS 2号軽油を使用する。着火燃料の種別ごとに二元燃料ディーゼル燃焼に及ぼす過給圧とEGR率との相乗効果を詳細に調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
空気流量計測法として、これまでは「丸型ノズル」を用いてきたが、過給を適用した場合には空気温度が変化するなどのために計測精度が低下するという問題が生じた。この問題を解消するためには、より精密計測が可能な「層流形空気流量計」を過給機上流側に設置することが必要である。同流量計は高額であるため、本年度の使用額を調整した。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は、27年度において層流形空気流量計を購入するための費用に充てる。
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