研究課題/領域番号 |
25420928
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
渡辺 裕文 中部大学, 超伝導・持続可能エネルギー研究センター, 准教授 (10447584)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超伝導直流送電 / 超伝導ケーブル |
研究実績の概要 |
本研究では高温超伝導線材を用いた超伝導直流送電用ケーブルの設計において、最適な線材配置を求めるために、様々な線材配置に対するケーブルの臨界電流を求めるプログラムを作成することを目的としている。臨界電流密度は線材を流れる電流により発生する磁場により制限されるため、線材中の臨界電流密度分布の磁場に対する依存性を表す式を実験により求め、プログラムに組み込む。磁場と臨界電流密度の関係式のモデルとしてGomoryらが用いた式[F.Gomory et al Supercond. Schi. Technol. Vol.19(2006)732]を採用する。 26年度は磁場と臨界電流密度の関係式を求めるために、160A級のBi系高温超伝導線材に対して外部から加えた磁場の強さや向き対する臨界電流の依存性を測定し、データを得た。外部からの磁場は0-0.1Tの範囲で変化させ、線材表面法線に対して0度から90度まで約30度間隔で測定した。 昨年度完成させた線材中の臨界電流密度を計算するプログラムを元に、外部から加えた磁場の効果を考慮したプログラムを作成した。そのプログラムを用いて、上記、外部から加えた磁場の強さと向きに対する臨界電流の依存性の実験値を計算により再現させることにより、Gomoryらの式中の四つの変数を求め、磁場と臨界電流密度の関係式を求めた。 ケーブル状に配置した線材の臨界電流の計算結果と実験結果を比較する手始めとして、2本の線材を向き合わせ5mm離して平行に配置した場合と4本の線材を一辺5mmの四角状に配置した場合で電流を一方向に通電し、線材の臨界電流を測定した。その結果と、計算により求めた結果を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度の計画では臨界電流の外部磁場の線材表面に対する向きと強さへの依存性の測定を継続し、25年度に行った実験よりも更に広い領域で磁場方向、強さ、線材について測定を行うこととしていた。また、ケーブル状の配置は大変なので、まず三本の線材を平板上に平行に並べ等量の電流を同方向に流し、中央の線材の臨界電流を測定し、結果を計算結果と比較し、完成したプログラムが実験結果を再現するか確認することとしていた。そして、完成したプログラムを用いて条件を変えながら様々な線材配置について網羅的に臨界電流を計算し、臨界電流が増加する線材配置を求めることとしていた。 25年度の臨界電流の外部磁場の線材表面に対する強さと向きへの依存性の測定では0-0.05Tの範囲で線材表面の法線に対して0度と30度のみで測定を行ったが、26年度は0-0.1Tの範囲で0度から90度まで約30度間隔で測定した。臨界電流の外部磁場の向きと強さへの依存性の計算結果の実験結果に対する再現性は良く、精度良く臨界電流密度分布の磁場に対する依存性の式が求められたと考えている。 計画の三本の線材を平板上に並べ臨界電流を測定し、計算結果と比較するという当初の計画から進み、4本までではあるが、ケーブルを模して環状に線材を配置し、臨界電流の測定を行った。その測定結果を計算結果と比較した。現状では計算結果は十分には実験結果を再現しておらす、プログラムの確認を次年度の課題とした。 以上により、実験については当初の計画に比べケーブルに近い形状を想定した実験まで行い進んでいるが、計算については臨界電流が増加する線材配置を求めることまで到達しておらず、今回の評価をやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
27年度についても、臨界電流の外部磁場の線材表面に対する強さと向きへの依存性の測定についてはデータ蓄積の必要性から継続する。 外部磁場の強さと向きに対する臨界電流の測定結果に対して計算結果を良く再現するように臨界電流密度分布の磁場に対する依存性の式を求めることができた。しかしながら、2本又は4本の線材を配置して臨界電流を測定した実験の実験結果に対する計算結果の再現性は十分には得られなかった。この点について、改めて式及びプログラムの評価を行い、必要があれば修正を行う。 26年度に行った線材配置に対する臨界電流測定では2本又は4本の線材を配置して行ったが、27年度は使用する線材の本数を増やし更にケーブル形状に近い配置について測定を行う。特に、超伝導ケーブルでは導体は積層構造を取ることが多く、そのような構造の場合、上側と下側で線材が密着するために臨界電流に与える磁場の影響が大きくなると考えられる。このようにして得られた実験結果と計算により得られた結果を比較し、プログラムが実験結果を再現するか確認する。 上記実験と平行して、完成したプログラムを用い、様々な線材配置について、ケーブルの臨界電流を計算する。条件を変えながら網羅的に試し、臨界電流が増加する線材の配置を求める。求められた線材配置について、モデルケーブルを自作し、臨界電流を測定し、計算結果を反映していることを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度の研究計画では三本の線材を平板上に並べて臨界電流測定を行う予定であったが、計算との比較のためには線材配置に対称性が必要であることが判明したため、この測定を行わず、ケーブル形状に近い配置での実験に進むこととした。そのため、三本の線材を固定するための治具を製作する予算が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は現在4本までの線材で測定を行ったが、順次本数を増やし、ケーブルに近い配置で臨界電流測定を行い、計算結果と比較する。何種類か線材を固定するための治具を製作する予定であるが、次年度使用額はその製作に充当する。また、27年度も臨界電流の磁場の強さと向きに対する依存性の測定を継続することとしたため、それに関する計測機器及び消耗品を購入する。
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