高温超伝導線材の臨界電流は線材の周りに発生する磁場の影響を受け変化する。超伝導直流送電用ケーブルには複数の線材が用いられ、ケーブル中の線材配置によって線材周りの磁場分布が変化するため、ケーブルに通電可能な最大電流は線材の配置により変化する。本研究では超伝導直流送電用ケーブルの設計において、最適な線材配置を求めるため、線材配置に対するケーブルの臨界電流を求めるプログラムを作成する。 前年度までに、線材中の磁場と臨界電流密度の関係を表す式を実験的に求め、線材配置から臨界電流を計算するプログラムを完成させた。完成させたプログラムを用い、簡単な線材配置においてプログラムが有効に働くことを確認した。 本年度は、ケーブルの線材配置を表す様々な数値モデルを作成し、プログラムを用いることにより臨界電流を計算し、最適線材配置を求めた。数値モデルでは内層6本、外層6本の2層構造とし、ケーブル径を変化させることにより、線材間の隙間を調整した。計算結果では、線材同士が接触する最密な配置では、自己磁場中の一本の線材の臨界電流に比べ約10%臨界電流が減少し、線材間に隙間を開けた配置において最大約10%臨界電流が増加した。 計算に用いた数値モデルを元に、モデルケーブルを2種類作成した。作成したモデルケーブルは線材を最密配置した物と、計算において最大の臨界電流を与えた配置にした物である。これらのモデルケーブルに液体窒素中で通電し、臨界電流を測定した。測定された臨界電流は、ケーブルの組立精度を考慮するとプログラムによる計算結果とよく一致していた。計算結果と実験結果の比較により、今回作成されたケーブルの臨界電流を計算するプログラムは有効に働いていることが確認できた。
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