研究課題
私たちは、ホスファチジルエタノールアミン(PE)の細胞膜内動態が神経軸索の伸長にどのように関与するかの解析を行ってきている。前回までの科研費の研究によって、Ⅳ型ATPaseにより誘導されるPEの細胞膜内動態が神経突起の伸長が、海馬神経細胞の軸索伸長に重要な働きを持つことがわかっていたので、本研究では末梢神経細胞(脊髄後根神経節(DRG)神経細胞の損傷後に起きる末梢神経の軸索再生にどのような役割を果たしているのかを明らかにすることを目的とした。昨年度までの実験により、坐骨神経の完全切断-神経端再縫合モデルの実験系が確立できたので、この系でPEの細胞膜内動態を検討することを試みてきた。しかし、再伸長中の神経線維先端(成長円錐)を選択的に可視化することが困難であり時間を取られてしまった。現在も検討を続けているところである。また、培養DRG神経細胞を用いた解析も行ってきたが、Ⅳ型ATPaseのcDNAまたsiRNAのトランスフェクションがうまく機能しないため、PEの細胞膜内動態を人為的に制御する新しいシステムの開発を検討してきた。過去の文献に、Tissue inhibitor of metalloproteinase(Timp)ファミリーのプロテアーゼが細胞膜脂質の細胞膜内動態を制御するという報告があったので、末梢神経損傷におけるTimpファミリーの役割の検討を行った。マウス坐骨神経損傷後の損傷部位におけるTimpファミリーの発現解析を行った結果、Timp-3とTimp-4が選択的に発現誘導されることがわかった。また、Timp-3の部分ペプチドを損傷部位に適用した際に、神経軸索の再生が阻害されることがわかった。今後、この系を用いて、Timpファミリーが細胞膜脂質の細胞膜内動態にどのように影響を与えるかを解析していく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件)
Scientific Reports
巻: 7 ページ: 46649
10.1038/srep46649.
Internal Medicine Review
巻: 3 ページ: -
10.18103/imr.v3i2.354