本研究ではマカクサルを実験動物とし、逆行性・越シナプス性神経トレーサーである狂犬病ウイルスを用いて網膜神経節細胞から大脳皮質高次視覚領域へ至る視覚情報処理システムの解剖学的基盤に関して新しい知見を得ることを目標としている。 本年度は狂犬病ウイルスが網膜に発現することの確認及び標本作成プロトコール確認のため、ラットの網膜フラットマウント標本、パラフィン包埋の薄切標本の作製を試みた。目標とするマカクサルの眼球は巨大であるため、最初に網膜フラットマウント標本で狂犬病ウイルスにてラベルされた神経節細胞の発現部位をある程度推測し、絞り込んだ後に薄切標本でさらなる詳細な検討を加える予定としているためである。結果、最初に行った薄切標本で狂犬病ウイルスに感染した神経節細胞を確認することができた。現在フラットマウント標本の作製に取り組んでいる。 並行してマカクサルのMT領域に狂犬病ウイルスを注入して3日後に還流固定された個体、及びV4領域に狂犬病ウイルスを注入して4日後に還流固定された個体から眼球標本を取り出した。MT領域、V4領域の同定はマカクサルに固視課題を遂行させ、数種の色覚、形態、動きの指標を提示し、電気生理学的手法を用いて注入部位の網膜地図を作成しつつ施行した。先述したラット網膜フラットマウント標本の作製が成功次第、これらマカクサルの眼球からフラットマウント標本、薄切標本を作製する予定である。
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