本年度の目標の一つとしてマカクサルの網膜フラットマウント作成を目指した。目標とするマカクサルの眼球は巨大であるために薄切標本では膨大な数の切片が作成されること、及び長い視神経の軸索を経由して狂犬病ウイルスが網膜に感染するために網膜で発現する細胞数が少ない可能性が存在することから、網膜フラットマウントの作成及び解析を行うことで、発現が期待される領域を絞り込むことが可能になり、薄切標本を用いた解析の際により詳細な検討が可能になると考えられたためである。そこで昨年度行ったラットの薄切標本の作成・検討を発展させ、ラットの脳内に狂犬病ウイルスを注入した眼球標本を用いてラット網膜のフラットマウント標本の作成をまず試みた。結果、ラットのフラットマウントを無事作成し、染色等の操作を行い、狂犬病ウイルスが網膜に発現されていること、フラットマウントでの染色プロトコールが正しく機能していることを確認した。その次にコントロールとなるマカクサルの眼球から網膜フラットマウントの作成を試みた。マカクサルの網膜がその元来の形態から丸まってしまうこと、網膜そのものが巨大なことのためにスライドグラスに乗らないため、網膜の視神経乳頭部、黄斑部を中心としていくつかのパーツに分け、スライドグラスに乗せ、標本を作製することに成功した。既に高次視覚野である第五視覚領域、第四視覚領域に狂犬病ウイルスを注入し、3日及び4日おいて還流固定した眼球標本は作製済みであるため、今後本試験としてこれらの眼球を用いて眼球フラットマウントの作成・薄切標本の作製を行い、検討を加える予定である。
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