研究課題
本研究の目的は、運動制御に関する神経活動の性質を統一的に説明する計算論モデルを構築し、運動制御の脳メカニズムを解明することである。運動制御の神経メカニズムに関して、サル電気生理実験・ヒト脳機能イメージング・ヒト心理物理実験を通して研究が行われてきたが、脳がどのような表現や計算アルゴリズムを用いているかは未解明のままである。そのギャップを埋めるべく、本研究では大脳皮質と小脳を含む運動野ネットワークの計算モデル化を試みた。まず、神経活動が最も詳しく調べられている第一次運動野(M1)の計算論モデルを構築した。従来用いられてきた関節角表現ではなく、身体運動を空間ベクトルとして表現し、その空間ベクトルから関節トルクへの変換をニュートン・オイラー運動方程式として定式化した。この視覚運動変換中に現れるベクトル外積をM1神経活動と仮定すると、M1神経活動の様々な性質が統一的に説明できることを示した。加えて、この計算モデルは運動適応の汎化パターンなど、ヒト心理物理実験の結果も説明することができる。M1の計算モデルに加えて、小脳(小脳皮質および小脳核)の計算モデルも構築した。これまでの臨床観察と心理物理実験から、小脳は身体の状態を予測する「順モデル」として働いていると考えてられてきたが、未だ神経活動からの直接の証拠はない。小脳の入力である苔状線維、小脳皮質の出力であるプルキンエ細胞、そして小脳の出力である小脳核細胞の神経活動を詳しく調べ、小脳のフィードフォワード回路で予測的な計算が行われているとする計算論モデルを構築した。小脳と大脳皮質のモデルを結合し、小脳が大脳皮質からの入力を予測するとする計算論モデルを構築し、大脳皮質の内部順モデルとしての小脳という描像を提案した。上記の研究は、大脳皮質運動野と小脳の計算論的連関を明らかにする初めての計算論モデルである。
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BRAIN and NERVE-神経研究の進歩, 68(11), 1379-1384.
巻: 68 ページ: 1379-4384
http://dx.doi.org/10.11477/mf.1416200601
https://www.jaist.ac.jp/profiles/info.php?profile_id=592
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