脳波とは大脳皮質神経細胞に発生するリズム性の電位変化を巨視的にとらえたものであり、その電位変化は「樹状突起に起こるシナプス後電位が集積されたもの」と教科書的には説明されているが、いまだその波形の成り立ちについての詳細は明らかにされていない。本研究課題では、無麻酔ラットの脳波を記録しながら、主に大脳皮質運動野錐体細胞と線条体中型有棘神経細胞の膜電位を、インビボホールセルパッチクランプ法を用いて記録し、運動時や覚醒無動時などにおける脳波と膜電位との連関を解明することを目的としている。 初年度(平成25年度)は覚醒ラット大脳皮質神経細胞からのホールセルパッチクランプ記録の技術改良と安定化に努め、無麻酔運動中のラットからコンピュータ解析に耐えうる時間長の膜電位記録ができるように研鑽した。次年度(平成26年度)は脳表面から3㎜以上深い場所までガラス製パッチ電極を刺入し、線条体中型有棘神経細胞からの膜電位記録の安定化に挑戦した。さらに、記録に成功した中型有棘神経細胞が、大脳基底核運動制御神経回路のうち、直接路ニューロンなのか間接路ニューロンなのかを特定する目的で、間接路ニューロンに特異的に発現するプレプロエンケファリンと、記録ニューロンに注入したバイオサイチンとの二重免疫染色を試みた。膜電位記録を行っている時には必ず脳波を同時記録した。最終年度(平成27年度)は、研究代表者の勤務先が変わったため、実験機器の整備と補充を行いつつ、引き続き組織学的な検索を続け、記録データの解析を行った。
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