研究課題
変異型SOD1マウス脊髄のイノシトール6リン酸キナーゼ2(IP6K2)の発現状況の検討より、歩行障害などの発症前よりIP6K2の発現が上昇していることを発見した。よって、IP6K2が、ALS発症前の診断マーカーになり得る可能がることを報告した。ALS病態の重要な現象である脊髄前角細胞のTDP-43の細胞質への凝集体形成に関して、神経系培養細胞(SHSY-5Y細胞)を用い、TDP-43のC末端部位プラスミド(細胞質に凝集体を形成)を過剰発現させたろころ、細胞死は促進されなかった。しかし、IP6K2を共発現させることにより、有意に細胞死が促進された。さらにその現象では、細胞保護に働くHSP70、HSP90やAkt活性化が低下していた。これらの成果をMolecular Neurobiology(Nagata E, et al, 2015)に発表した。また、ALS患者剖検脊髄の解析を行い、脊髄前角細胞をマイクロダイセクション法により選択的に抽出し、IP6Kの遺伝子発現状況をqPCR法で検討したところ、コントロール脊髄と比較して、有意にIP6K2発現が上昇していることを見出した。さらに他のサブタイプであるIP6K1やIP6K3に関しては、ヒト脊髄前角細胞ではほとんど発現していないことが明らかとなった。また、患者血清、脳脊髄液を用いての簡易IP6K活性測定系を確立した。血清および脳脊髄液から過塩素酸を用い、チタンビーズに吸着させることによりイノシトールリン酸(IP)を抽出した。これを濃縮して染色液とともにゲルを用いて電気泳動を行い、IP6、IP7などを分離する。現在、血清に関しては採血20mlぐらいで安定して結果が出るようになり、ALS患者と年齢のマッチした健常者で比較検討している。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Molecular Neurobiology
巻: 6 ページ: Epub