中枢神経系の抑制性シナプスにおいては、シナプス小胞は抑制性伝達物質GABAを開口放出した後、エンドサイトーシスによって回収され、開口部位へとリサイクリングされるが、その過程で、シナプス末端内のGABAを取り込んで、新たな開口放出に備える。小胞充填に必要な時間は小胞の再利用に必要な時間を規定し、小胞充填機構の修飾は、シナプス伝達効率を変化させる。本研究は、中枢神経系において主要な抑制性シナプス伝達を担うGABAのシナプス小胞への再充填時間の測定を第一の研究目的とし、充填修飾機構の解明を第二の研究目的とする。 平成27年度は、抑制性シナプスにおけるGABA充填速度がシナプス伝達に及ぼす影響について研究を行った。具体的には、平成25年度、および平成26年度に確立したシナプス前終末GABA濃度操作技術を適用し、小脳籠細胞-プルキンエ細胞間シナプス伝達における高頻度活動時のシナプス伝達に対するGABA充填速度の影響を、高頻度発火中のシナプス応答の減衰、および高頻度発火後の回復過程の時定数を計測した。 興奮性神経伝達物質グルタミン酸における報告と異なり小胞へのGABA充填速度は遅いが、籠細胞-プルキンエ細胞間シナプスの低い放出確率とシナプス小胞プールからの十分な小胞の補充によりGABA充填はシナプス伝達の律速過程とはならないことが明らかになった。
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