研究課題/領域番号 |
25430020
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研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
畠中 由美子 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特別協力研究員 (40271548)
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研究分担者 |
平田 たつみ 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 教授 (80260587)
川崎 能彦 国立遺伝学研究所, 総合遺伝研究系, 助教 (00322751)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 発生•分化 / 解剖学 / 神経細胞移動 / 細胞間相互作用 |
研究実績の概要 |
PlexinA2/A4ダブルノックアウト(DKO)マウスでは、ニューロンが第1層に異所分布する。昨年までに、浅層に分布する興奮性ニューロンがovermigrationすることにより、第1層に分布することを明らかにしてきた。また、限られた興奮性ニューロンのみが異所的に分布する原因として、PlexinA2ならびにPlexinA4の発現を解析したところ、これらが浅層細胞の移動の最終段階で一過的に増大すること、PlexinA2をPlexinA2/A4DKOマウスの浅層移動細胞に導入すると異所分布がレスキューされることから、PlexinA2/A4がこれら興奮性ニューロンで時空間的に限局して発現することが正常組織構築に重要であることを明らかにしてきた。本年度はさらにリガンド候補のSema6Aについて解析を行った。シグナルシーケンストラップ法で作成されたSema6A遺伝子座改変マウスにおいて、第1層に異所細胞が現れることがすでに報告されている。Sema6Aは中枢神経系の様々な場所に発現するため、今回新たにコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作成した。まず全身でSema6Aをノックアウト(第3エクソン欠損)したマウスについて解析を行ったところ、やはり第1層に異所細胞が現れた。Sema6AcKOマウスとEmx1-Creマウスを交配したところ第1層に異所細胞が現れることから、大脳皮質内のSema6A発現細胞が正常な組織構築に必要と考えられた。抗Sema6A抗体を用いてその発現を調べたところ、皮質全体に点状に反応が見られたが、移動浅層細胞が表層に近づく時期に第1層にその反応が強くみられ、このSema6AとPlexinA2/A4が相互作用していると考えられた。Emx1-Creで組換えられる細胞のうち、原因となる細胞を同定する実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Sema6A cKOマウスを得る事ができ、Sema6AがPlexinA2/A4と相互作用する場を解析することが可能になり、予定している計画に大きな進展があった。一方、移動細胞のタイムラプスイメージングはPlexinA2/A4ダブルノックアウトマウス数をコンスタントに得るのが難しいため、保留になっている。
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今後の研究の推進方策 |
Sema6A cKOマウスを用い、皮質神経ニューロンで発現するPlexinA2/A4と相互作用しているSema6A発現細胞の同定を行う。また、その細胞が原因細胞であることの証拠をさらに得るために、浅層細胞以外に異所的にPlexinA2やSema6Aを発現させるあるいは培養系を用いてその機能の検証を行う実験を新たに計画する。すでに知られている細胞移動に影響を与えるシグナル系について複数調べているが関連がある候補は出てきていない。これまでとは異なる重要な因子として取り扱う視点も入れて解析していく。これまでと同様に解析の試料作成を研究分担者の平田・川崎が担当し、解析は主に代表者と実験補助者が行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月の段階で生じた論文投稿費等約20万円が次年度の会計処理となった。 また、マウスの交配が予定通りにすすまなかった。これに関わる費用を次年度に繰り越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
マウスを使った実験の諸経費として使用する。
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