研究期間全体を通して、片側(右側)の一次視覚野を除去して作成された盲視モデルのマカクザルを2頭用いて実験を行った。逆行性ウイルスベクターFuGB2を視床枕に注入し、さらに順行性ベクターAAVを上丘に注入する二重遺伝子導入法を用いて上丘から視床枕への神経経路選択的に破傷風毒素の遺伝子を導入し、ドキシサイクリン(Dox)の経口投与により上丘-視床枕経路の選択的な神経伝達遮断を試みた。Dox投与前と投与中に視覚刺激誘導性サッケード課題をサルに行わせ成績を記録し解析した。調べた2頭の盲視モデルサルにおいて、損傷視野における課題の成績はDox投与中に有意に低下した。またDox非投与下で視床枕へ抑制性伝達物質GABAの作動薬であるムシモルの微量注入を行い、盲視モデルサルの視床枕の活動を抑制した場合の視覚刺激誘導性サッケード課題の成績についても記録、解析を行った。2頭のサルで損傷視野における課題の成績はムシモル注入後に有意に低下した。実験終了後に動物を灌流固定し脳組織標本を採取し、組織学的な検証を行った。 平成27年度は昨年度から継続して2頭目の盲視モデルサルについて1頭目と同様な実験を行い、脳組織の採取を行った。2頭のサルから得られた課題成績について解析を行い再現性の確認を行った。
|