研究課題/領域番号 |
25430025
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
宮坂 信彦 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 副チームリーダー (70332335)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 嗅覚 / 神経回路 / 脳 / 行動 / 遺伝子工学 / 嗅球 / 間脳 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
前年度までに、嗅覚行動出力に対する手綱核経路および視床下部経路の役割を解析する遺伝学的ツールとして、特定のニューロンサブセットを賦活、抑制、除去するためのトランスジェニックゼブラフィッシュ系統を樹立している。これらのトランスジェニック系統が実際に嗅覚行動に関わる神経回路素子の解析に有用であるかどうかを検証するためには、様々な視点から嗅覚行動を解析できる行動実験システムの確立が必須である。研究代表者らはこれまでに、食物に由来するアミノ酸に対する誘引行動や、ゼブラフィッシュ皮膚抽出物中の警報フェロモンに対する恐怖反応を解析する行動実験システムを確立している。本年度はさらに、多様な匂いに対する行動応答の検出を目的として、流水式2チャンネル選択水路装置を構築し、匂いに対する誘引および忌避反応を同時に解析可能な行動実験システムを確立した。また、嗅覚を介した生殖行動を詳細に解析するために、メスに対するオスの求愛行動に3つのパラメーター(追尾、つつき、回り込み)を設定し、その時間と回数を測定することで、求愛行動の定量的解析法を確立した。この過程において、排卵期のメスから放出される性フェロモンであるプロスタグランジンF2aの嗅覚受容体を同定し、その受容体の機能を欠損したゼブラフィッシュ変異体をゲノム編集技術によって作製した。前述の求愛行動の定量解析システムを用いてオス変異体の行動を解析したところ、3つのパラメータによって規定されるメスへの求愛行動の持続時間が著しく減少することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
使用を予定していたトランスジェニックゼブラフィッシュ系統の樹立に想定以上の時間を要した。さらに、そのうちの一部の系統に寄生虫感染が認められ、系統清浄化が必要となり実験の実施が延期となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度までに、特定の神経回路素子を賦活、抑制、除去するためのトランスジェニックゼブラフィッシュ系統の樹立と、様々な嗅覚行動(匂いに対する誘引・忌避、皮膚抽出物に対する恐怖反応、生殖行動におけるオスの求愛など)を定量解析する行動実験システムの確立が完了した。今後はこれらを組み合わせることで、手綱核経路および視床下部経路が嗅覚行動出力に果たす役割の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用を予定していたトランスジェニックゼブラフィッシュ系統の樹立に想定以上の時間を要した。さらに、そのうちの一部の系統に寄生虫感染が認められ、系統清浄化が必要となり実験の実施が延期となった。
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次年度使用額の使用計画 |
これまでに作製したトランスジェニックゼブラフィッシュ系統の維持費、行動実験の消耗品費(特殊水槽作製費を含む)、分子生物学・免疫組織化学・生化学的解析のための消耗品費、研究成果発表のための旅費に使用する。
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