研究課題
ゼブラフィッシュの嗅覚行動出力における嗅球-間脳直接経路の役割を解析するために、前年度までに様々な行動実験システムの確立を行ってきた。本年度は、食物に由来する匂い成分と考えられるATPについて、ゼブラフィッシュの行動応答とその神経回路メカニズムに注目して解析を行った。ゼブラフィッシュはATPに対して誘引行動を示し、その行動応答は、同じく食物に由来するアミノ酸の一種であるアラニンよりも低濃度で誘起された。嗅上皮におけるATPの受容メカニズムを解析したところ、魚類や両生類のゲノムに特異的に存在する新規アデノシン受容体A2cが嗅覚受容体として機能することが明らかとなった。さらに、ATPは鼻腔内で細胞外核酸加水分解酵素によって積極的かつ速やかに分解され、産生されたアデノシンがA2c受容体を活性化して嗅覚応答を誘起することを見出した。また、ATPに対する行動応答にともなって活性化する高次脳領域をc-fos遺伝子の発現によって解析したところ、終脳および視床下部の複数の領域が活性化されることが明らかになった。視床下部の後方結節は嗅球-間脳直接経路を構成するが、ATPとアラニンのどちらの嗅覚入力でも活性化されることから、匂いによって誘起される誘引行動と密接な関連があることが示唆された。さらに、ATPのみによって活性化する領域が視床下部に存在することも明らかとなり、アミノ酸とは異なるATPの嗅覚入力に特異的な行動学的・生理学的機能の存在が示唆された。
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Current Biology
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Nature Neuroscience
巻: 19 ページ: 897-904
10.1038/nn.4314