研究課題
本研究は単離脳解析から見出された、ドパミン依存的神経可塑性を元に、この可塑的変化に応じてリン酸化状態が変化する分子をスクリーニングし、新たな記憶関連遺伝子を同定するものである。昨年度までに、いくつかの候補遺伝子が見出され、これらの遺伝子群から推測される細胞機能、特にミトコンドリアや細胞骨格の変化を解析できる遺伝子組換え体を用いて、神経の可塑的変化が起きる際のミトコンドリアや細胞骨格文枝の挙動を観察した。しかしながら、昨年度においてはこれらの挙動に顕著な変化は見られなかった。そこで、26年度においてはより直接的な解析を試みた。すなわち、ノックダウンによって記憶が障害された候補遺伝子が標識タンパクを付けた状態で発現されるような遺伝子組換え体を作成し、これらのタンパクが実際にドパミン依存的な神経可塑性を引き起こす際に、リン酸化レベルが変化するのか否かを解析した。その結果、いくつかの分子においてリン酸化レベルが変化することが見出された。今後は、この分子のどのようなリン酸化レベルが変化するのか否かを明らかにする。また、この遺伝子をノックダウンした変異体において、可塑性が変化するのかを解析する。
2: おおむね順調に進展している
質量分析、およびリン酸化タンパク検出ゲルの組み合わせにより、新たな候補分子が同定された。さらに、これらの分子の発現を、記憶中枢特異的にかつ発生後に抑制したところ、記憶形成の阻害が引き起こされることを見出した。従って、これら分子のリン酸化状態が記憶形成と重要な関係にあることが推測される。
生化学的解析、および行動実験で見出された新規記憶関連分子のさらなる解析を行う。具体的には神経の可塑的変化誘導の前後の脳から、これら分子を精製し、リン酸化部位を質量分析で同定する。同定後はリン酸化部位をノックインにより破壊したハエを作成し、記憶や神経可塑性を解析する。一方、これら分子を蛍光標識視、神経可塑性を誘導した際の分子の挙動を顕微鏡で観察し、可塑的変化時における分子の機能を推定する。
海外企業へ実験器具を発注依頼を行う予定であったが、納品が26年度中に間に合わないことが判明し、そのためその支払い額を27年度に計上した。
繰り越し分は、上記の通り実験器具の購入費用として使用する。残額に関しては実験計画の予定通り使用する予定である。
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Neuron
巻: 84 ページ: 753-763
10.1016
http://www.igakuken.or.jp/