小脳が多彩な機能を持つために重要な小脳の区画構造が、どのように形成されるのかを明らかにするため、われわれのこれまでの区画構造の形成過程の研究をさらに発展させ、胎生期の区画が成熟期の区画にいかに再編成されるか、プルキンエ細胞が生まれてからどのようにして区画ごとの集団に分かれるのか、そして、胎生期の区画がどのように部位対応的軸索投射の形成に寄与するかという重要な問題を、主として遺伝子改変マウスを利用した形態学的手法によって解明していくことが本研究の目的である。既に入手済みのOL-KOノックインマウスに関し、27年度は、胎児期小脳のプルキンエ細胞集団の形成、変形課程の精密な解析を継続した。このマウスでは、プロトカドヘリン10分子を発現する特定のプルキンエ細胞集団が、レポータータンパクベータガラクトシダーゼを発現することで、固定標本における発色反応で青色に発色するので容易に追跡することができる。胎生期13.5日から17.5日まで、プロトカドヘリン10分子陽性集団が齢が経過すると共に次第に、位置、場所、形を変えていく様子を、連続切片からの三次元的再構築により明らかにすることができたので、さらに、胎生期14.5日における、プルキンエ細胞亜集団の空間的配置パタンの全貌を、プロトカドヘリン10とそれ以外の各種マーカー分子の免疫染色の組み合わせによって明らかにした。これらの結果を合わせて、現在、発表準備中である。 また、平行して、小脳の区画構造の機能に関する比較形態学的解析も継続した。トリの小脳における縦縞区画構造を、アルドラーゼC発現パタンと下オリーブ核からの軸索投射パタンに基づいて解明した。これを、以前に明らかにしたラット等の哺乳類の小脳の区画構造と比較して発表した。
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