研究実績の概要 |
本年度、研究費申請時に計画した3つの実験すべてについて進捗があった。 実験1「in vivo カルシウムイメージングによる下丘神経回路網の音刺激に対する応答の解明」について、2014年にBrain Res誌に報告し(Ito et al., 2014)、本年度Anat Sci Int誌上で総説にまとめた(Ito et al., 2015a)下丘表層細胞の応答性がどのような局所回路で作られているのか調べるため、下丘表層スライスを電位イメージングし、下丘表層内でどのような局所結合が存在するのか調べた。下丘表層には同心円状の相互結合があるようである。これについて、新規に開発した軸索標識と電位イメージングの複合解析(第38回日本神経科学学会にて報告)を用いてより詳細な検討を行うことが今後の課題となる。 実験2「神経活動依存性分子発現を用いた下丘ニューロンの刺激選好性解析」について、麻酔の有無、音圧の大小などの条件検討が終了したので、今後データをまとめていくことが可能となった。この際多変量解析の技法を導入して解析を行うため、解析プログラムの開発を行った。 実験3「下丘単一ニューロンの機能形態学」について、実験データの追加を重ね、計100個の細胞について近傍記録染色法によって標識することができた。データ数が増えたことによって、下丘の細胞種の違いが統計学的に有意な生理学的性質の違いと関係することが見出されつつある。また、このような下丘の細胞種がげっ歯類だけでなく、霊長類(Ito et al., 2015a, b)や鳥類(Ito and Atoji, in press)にも存在することが確認された。
|