研究課題/領域番号 |
25430036
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
桐生 寿美子(瀬尾寿美子) 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311529)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性 / 神経再生 / ミトコンドリア分裂 / ミトコンドリアダイナミクス / 神経損傷 / Drp1 |
研究実績の概要 |
本研究課題では損傷神経細胞におけるミトコンドリア品質管理のメカニズムがどのように神経再生・変性に関与するのかin vivoで明らかにすることを目指す。このため、神経損傷に応答しcreリコンビナーゼを発現すると同時にミトコンドリアをGFP標識するユニークなマウスをツールとして用いた。昨年度creリコンビナーゼの異所性発現からfloxマウスとの交配が進まず問題となったが、複数ラインのcreマウスを作製する事でこの点を解決することができた。当該年度はミトコンドリア品質管理に関わる分子群のfloxマウスと神経損傷特異的cre マウスとの交配をさらに進め、このうち発生過程や通常の神経活動に影響を及ぼさず神経損傷に応答しミトコンドリア分裂が抑制されるマウス(Drp1CKO)の解析を中心に行った。Drp1 CKOマウス損傷神経細胞は、損傷後亢進するはずのミトコンドリア分裂が抑制されることにより損傷後2週間で細胞死及び軸索変性に至った。細胞死及び軸索変性に先立ち、Drp1 CKOマウス損傷神経細胞内では異常な形態のミトコンドリアが出現し、著しいミトコンドリア品質の低下が認められた。さらにミトコンドリア品質が低下する以前の損傷初期段階でDrp1 CKO損傷神経細胞周囲のグリア細胞が過剰に活性化していたことから、ミトコンドリア分裂が神経細胞自身や周囲のグリア細胞を損傷環境に適応させるためのシグナルとなる可能性も示唆された。従って神経損傷後のミトコンドリア分裂促進は、損傷神経細胞を守るための初期応答であることが次第に明らかになってきた。こうしたin vivoミトコンドリアダイナミクス解明への挑戦は、ミトコンドリアをターゲットとした再生医療や予防医学への大きな布石となると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Drp1 CKOマウスを用いた解析は当初の計画通りに進展した。並行して、健常神経細胞内のミトコンドリアを可視化し神経損傷前後でのミトコンドリアのターンオーバーを明らかにするため、健常時神経細胞内ミトコンドリアを赤色蛍光標識し神経損傷後その標識がOFFとなるようなトランスジェニックマウスの作製を行った。しかし、得られた複数ラインのマウスの外来蛍光蛋白の発現量は極めて低く実験遂行が困難であった。そこで損傷応答性マウスの健常神経に予めミトコンドリア標識赤色蛍光色素を注入し損傷前より軸索に局在するミトコンドリアを赤色標識することで、損傷後GFPで緑色に標識されるミトコンドリアと区別し実験を行った。当初の計画とは異なった手法となったが本年度中に解決に至ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
in vivo損傷神経細胞におけるミトコンドリア分裂に関して、ある程度のデータが蓄積されてきたことからこれに関する論文発表を行う。今後はDrp1 CKO以外のfloxマウスについても解析を進める予定である。
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