研究課題/領域番号 |
25430042
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
金子 律子 (大谷 律子) 東洋大学, 生命科学部, 教授 (00161183)
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研究分担者 |
五嶋 良郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00153750)
西原 真杉 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (90145673)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | CRMP4 / knockout mouse / dendrite / cell number / morphological disorders / physiological disorders / olfaction |
研究概要 |
平成25年度は、Collopsin response mediator protein 4 (CRMP4)の機能解明に関して、以下の実績をあげた。1.マウス視床下部の神経核(anterior ventral periventricular nucleus(AVPV))でのCRMP4タンパク質欠損の影響について解析した結果を纏め、Developmental Neurobiologyに発表した。概略は以下の通りである。性差の明瞭なAVPVでの発現タンパク質について、性差形成時期にプロテオミクス解析を行い、発現に雌雄差のあるタンパク質を同定した。その1つが、CRMP4であった。そこでCRMP4欠損マウスのAVPVを調べたところ、THニューロンの数に異常が見られた。この事から、CRMP4タンパク質はAVPVに存在するTHニューロンの数の決定(性差の決定)に関与する可能性を見出した。2.嗅球に関するCRMP4タンパク質の機能についても解析を進めた。その結果、CRMP4タンパク質欠損マウスでは、(1)層の厚さの異常が生後早期に起こる事、(2)僧帽細胞数には差がないが、細胞密度に異常が起こる事、(3)DiIによる細胞の逆行性トレース実験により、僧帽細胞のapical dendriteの長さに異常が起こる事などの形態異常が見つかった。(4)生理学的にも、仔マウスの嗅刺激識別能力の低下が見られた。(5)さらにその原因は、ニューロンの興奮が抑制されたためでなく、興奮が過剰となり、興奮の局在化が妨げられたためであると考えられる結果が得られた。(6)CRMP4遺伝子欠損によるTHニューロン数の異常が嗅球でも見つかった。これらのことから、CRMP4タンパク質は生後初期の層構造、樹状突起形成、そして神経回路形成に関わるタンパク質であることが示された。またTHニューロンの分化・生存に関わる可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRMP4の機能解明に繋がるCrmp4遺伝子欠損による形態学的異常や生理学的異常を見出すことができた。この異常を足掛かりとして、その原因を細胞レベル分子レベルまで掘り下げて調べることにより、CRMP4の脳発生過程での役割りを明らかにできると考える。初年度として次につながる十分なデーターを得ることができたので、おおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験結果から、CRMP4が樹状突起およびTH細胞の細胞数の決定調節に関係するタンパク質である可能性が示されたので、今後は細胞レベルおよび分子レベルでCRMP4がこれらの調節に関与するメカニズムについて明らかにすることを目指す。方法としては、①野生型とCRMP4欠損マウスの嗅球間で発達の差が著しく観察されるPD0日(出生日)について、両嗅球に発現するmRNAの違いを、マイクロアレイ解析により調べる。これによりCRMP4タンパクの有無が発現に影響を及ぼす遺伝子を捉えることができると考える。②次に、嗅球の初代培養あるいは株化神経細胞の培養系を用いて、CRMP4の欠損の及ぼす形態的影響を明らかにする。(これまでの予備実験により、樹状突起の異常とTHニューロン数の異常が、初代培養系でも確認されている。)③CRMP4タンパク質が欠損している細胞にCRMP4を強制発現させ、②の異常がレスキューされるか調べる。また、①で見つかったCRMP4の有無により発現が変化する他のmRNAが、CRMP4とどのような関係にあるのか、など調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度物品費の一部を次年度に繰り越した。平成25年度は別の研究費が取得できたため、共通に使用する緩衝液(リン酸バッファー等)や生理食塩水などの一般的試薬や溶液の科研費からの支出を抑えることができた。また、平成26年度には培養実験を予定しており、培養用フラスコ、培地類など消耗品の支出が増えることが予想されたため、その分の費用を来年に繰り越した。 平成26年度は、嗅球細胞の初代培養実験を始めるため、それに必要なマウスの購入や消耗品の購入に充てる。
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