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住環境変化と対人関係に基づく社会的ストレス時の自律神経性循環反応に対する視床下部・背内側核（DMH）、傍脳弓領域（PeF）、中脳中心灰白質（PAG）の役割と相互関係を意識下のラットを用いて検証した。対人関係の問題によるストレスを模した社会的敗北ストレスでは、ストレス暴露中に血圧と心拍数の有意な増加が認められた。この際に視床下部DMHとPeFに著しいニューロンの興奮が認められたが、中脳PAGのニューロンの興奮性には明らかな増加は認められなかった。また、視床下部DMHとPeFから中脳PAGへ、およびその逆の解剖学的な投射はわずかに認められたのみで、機能的な関与に言及するほどではなかった。以上の結果から、社会的敗北ストレスが循環反応を引き起こし、その反応に視床下部のDMHとPeFが大きく関与している可能性が示されたが、中脳の明らかな関与は認められなかった。
さらに、社会的敗北ストレスによって興奮した視床下部DMHとPeFのニューロンのうち、約20％はストレス性自律神経反応への関与が示唆される神経ペプチド・オレキシンを含有していた。この結果は、社会的敗北ストレスによって引き起こされる循環反応に、視床下部領域に局在するオレキシン含有ニューロンが一定の役割を果たしていることを示している。対人関係の問題によるストレスによってもたらされる健康上の問題に対して、視床下部とオレキシン含有ニューロンを標的とした研究が、今後の課題となることを示した。
以上の結果に対し、住環境変化のストレスは血圧や心拍数にも明らかな変化を引き起こさず、また視床下部DMHやPeF、および中脳PAGに分布するニューロンの興奮性に有意な増加を認められなかった。これらの結果より、住環境変化ストレスはその初期には自律神経性の循環反応をもたらすほどの強いストレス要因とはなり得ない可能性が示された。
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