研究課題
初年度に作製したConditional KOマウス系統を、Creリコンビナーゼを発現する4種類のマウス系統と交配して、発生期の嗅球やその他の脳神経組織で目的の遺伝子を機能破壊して、そのマウスにおける表現型解析を進めた。これらのマウスのうち、嗅球の神経細胞で特異的に目的遺伝子を欠失させたマウスにおいて、研究計画で目指した通りに球軸索の投射に異常が生じることが確認できた。このことはデザインしたとおりにConditional KOマウス系統がうまく動いていることを示していると同時に、目的遺伝子が嗅球の神経細胞において細胞自律的に機能していることを示唆している。ただしこれらのマウスでは、全身で遺伝子破壊した時と比べてマイルドな表現型異常を示す個体が多く含まれることも明らかとなった。その原因として、用いたマウス系統のCreリコンビナーゼの活性が充分でない可能性が高いことから、Creリコンビナーゼの活性を増強するために、テトラサイクリンを介した遺伝子発現誘導システムを導入するように実験計画を一部変更した。現在は変更したマウスの掛け合わせがほぼ終了し、表現型解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
計画した通りの表現型異常が観察できたことから、計画はおおむね順調に進展していると言って良い。ただし、嗅球の投射神経細胞で特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウス系統では、リコンビナーゼ活性が当初予想していたよりも低かったことを示唆する結果も得ており、これらのマウスを用いただけでは嗅球の投射神経細胞特異的に目的遺伝子を安定して破壊することができないという問題点も明らかになった。そこで、計画を一部変更してテトラサイクリンを介した遺伝子発現誘導を増強するシステムを導入したところ、問題点がほぼ解決されつつあることが分かってきた。これらのことから最終年度は当初予定した計画からほぼ遅れることなく研究を進めることが出来ると考えている。
今後は、作製したマウスの表現型解析を進めた上で、データの蓄積と解析を行うことで、本研究の目指す嗅球-嗅結節神経回路の機能に迫りたい。
Creリコンビナーゼ活性を増強するために、新しいシステムの導入を検討する必要があったため、本来は解析用に導入するはずだった解析機器や試薬、実験用マウスなどの購入の一部を来年度に持ち越した。
ノックアウトマウスの表現型解析に必要な、解析装置とそのアプリケーションや、試薬、実験用マウスの購入を計画している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLoS One
巻: 9 ページ: e97909