研究課題
哺乳類大脳皮質神経細胞は脳室帯(VZ)に直接由来するものと、脳室下帯(SVZ)での二次的な分裂を経て産生されるものがある。我々はマウスの皮質形成後期においては、VZに直接由来する神経細胞は、VZ内での最終分裂の後、約10時間VZ内に留まり、その後、VZの直上、SVZの下部に集積し、多極性細胞となって、さらに約24時間停留することを観察した。一方、SVZでさらに分裂する集団は、早期VZを離脱し、SVZ/中間帯(IZ)内に広く分散して分裂する。両者はVZを離脱するタイミングが異なることから、前者の集団をSEP (slowly exiting population)、後者をREP (rapidly exiting population)と呼ぶ。SEPはSVZ下部から移動を再開する時期に軸索を内側へと伸ばし、脳梁の線維束を作る。一方、REP に相当する細胞はヒトを含めた霊長類で著しく増加し、これらは大脳皮質の特に浅層の神経細胞を産生することが他の研究グループにより示されている。本研究ではSEPとREPが異なる線維連絡を形成する可能性について検討を行った。SEPとREPの産生比を決定する分子のスクリーニングにより、重要な候補を得た。その分子の子宮内電気穿孔法による強制発現ではREP産生が増強した。また霊長類においてはこの分子の発現が強く、特にSVZにおける持続した発現が顕著であった。マウス、およびヒトゲノムから、この分子の転写調節領域を単離し、マウス胎仔脳内での転写活性を測定した結果、ヒトの配列はマウスよりもその活性が増強していることが確認された。これらの結果は、ヒトが進化過程で大きな脳を持つことに至った分子機構の一端を明らかにしたことに留まらず、小頭症等の発症機序を明らかにする上での重要な知見を提供する。
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