研究実績の概要 |
非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍(AT/RT)を中心とした中枢神経系ラブドイド腫瘍の分類と概念の確立が本研究の目的であるが、これを達成するため3つの課題があげられた。1.通常の組織型の腫瘍にINI陰性のラブドイド腫瘍要素を伴う腫瘍が稀に存在するが、この2種類の腫瘍要素の腫瘍発生における関係、2.Epithelioid/rhabdoid cellを伴う星細胞系腫瘍の臨床病理学的および分子遺伝学的特徴の解明、3.INI1, BRG1遺伝子以外のSWI/SNF complexに属する第3の遺伝子の不活性化によるAT/RTが存在するか否か、である。最終年度は昨年度に引き続き、1について、上衣腫にINI1陰性のラブドイド腫瘍要素がみられた症例の解析を行い、テント上に発生する上衣腫に特異的なC11orf95-RELA 癒合遺伝子が両者に存在することを確認し、上衣腫から発生した二次性AT/RTであることを証明した。また、3の課題について、INI1, BRGが保たれたAT/RT類似胎児性腫瘍の4症例について免疫組織化学的にINI1, BRG1以外のSWI/SNF complexに属するsubunitである、SMARCA2, PBRM1, ARID1について発現の有無を検索したところ、SMARCA2とPBRM1の陰性化が認められた。分子遺伝学的な解析はこれからの課題であるが、これらの遺伝子の不活性化が腫瘍発生に関係している可能性が考えられた。 1-3の課題を解決するべくそれぞれ検索し、上皮様/ラブドイド膠芽腫、 二次性 AT/RT、INI1、BRG陽性AT/RT類似胎児性腫瘍の概念形成に寄与する新たな知見を提示できた。最終的にはこれらの知見を総合してAT/RTを中心とした中枢神経系ラブドイド腫瘍とみなされる腫瘍型の概念の確立と位置付けを行うことが可能となった。
|