研究課題
デュシャンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、骨格筋でのdystrophin欠損による筋力低下を特徴とする進行性の遺伝性疾患である。本疾患はX染色体劣性遺伝であるが、突然変異率も高く、男児の3300人に1人の罹患率である。DMDに対する根本的な治療法はなく、進行を遅らせるための様々な取り組みがされている。本研究では、細胞外マトリックス分子であるbiglycanをadeno assiciated virus(AAV)を介してDMDモデルマウスmdxに遺伝子導入することを検討する。biglycanはdystrophinの機能を代償し得るutrophinの発現を誘導することが知られている。AAV-biglycanを導入したmdxマウスにおいて、運動症状の改復、筋組織での病理像の改善、遺伝子発現の変化を調べて、その治療効果を検証した。AAV-biglycanを尾静脈より全身投与したmdxマウスは握力テストとロタロッドテストで運動症状が改善していた。mdxの骨格筋組織では、筋組織の大小不同や、中心核、細胞浸潤による炎症がみられるが、AAV治療マウスにおいて、CK値、筋細胞面積、中心核の割合が改善していた。AAVを介したBiglycanの導入により、治療マウスの筋組織中のBiglycanタンパク量が増加していた。筋組織における免疫染色により筋細胞中のutrophinの発現量は増加し、ジストログリカン複合体構成分子の発現量についても増加した。AAV8を介したBiglycan投与では肝臓での感染率が高く、肝臓においてBiglycanの生産が増加していた。Biglycanは細胞外分子であるため、血液に運ばれて全身のBiglycanが増加したと考えられる。このような細胞外分子を用いたタンパク係留治療は、必要な局所にタンパクを補充することができ、DMDのみならず様々な病態に効果が期待できる。
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