研究課題/領域番号 |
25430050
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
本田 裕之 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90624057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / プリオン病 / 病理学 / 蛋白重合度 / オリゴマー |
研究実績の概要 |
ヒトプリオン病の確定診断は病理解剖が不可欠である。病型分類はプリオン蛋白遺伝子変異およびコドン129M/V多型に加え、剖検脳のwestern blotによるプロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白(PrPres)の検出とバンドパターンの組み合わせが必要である。近年、強い感染性や神経細胞毒性を有しているプリオン蛋白オリゴマーが注目されている。我々は、プリオン蛋白のオリゴマー分画が分取可能であるゲル濾過遠心カラム法を開発しており、その手法で各種病型の検討を継続している。今年度は、新たに4例のプリオン病の剖検依頼があった。剖検したプリオン病症例は88例であり、そのうち50例で凍結脳標本を保存している。現在までに孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)やV180I変異を伴うCJD (V180I CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)において通常のwestern blotとオリゴマー分画の解析が終了している。sCJDではPrPresをオリゴマー分画に多く認め、モノマー分画には認めなかった。V180I CJDではオリゴマー分画に約10kDの低分子量PrPresをみとめ、これは新規の発見であった。GSSではオリゴマー分画においてsCJDにもみられるPrPres以外に、約8kDのPrPresを認めた。更に我々は、発症に17年の差を認めたGSSの一卵性双生児の姉妹例を検討した。発症に17年の差を認めるも、発症が早い姉にはレビー小体がみられ、発症が遅かった妹にはアルツハイマー病理がみられた。一方で、プリオン蛋白の沈着様式は似通っておりオリゴマー分画の解析においても姉妹間のPrPresのパターンは類似していた。プリオン蛋白の組織学的・蛋白生化学的な性状は類似していたが、臨床経過や合併する病理変化には違いがみられた。一卵性双生児におけるオリゴマー分画の解析は新規の所見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)やV180I変異を伴うCJD (V180I CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)において通常のwestern blotとオリゴマー分画の解析が終了している。V180I CJDではオリゴマー分画に約10kDの低分子量PrPresをみとめ、これは新規の発見であった。更に我々は、発症に17年の差を認めたGSSの一卵性双生児の姉妹例を検討した。発症に17年の差を認めるも、プリオン蛋白の沈着様式は似通っておりオリゴマー分画の解析においても姉妹間のPrPresのパターンは類似していた。一方で、姉にはレビー小体がみられ妹にはアルツハイマー病病理がみられた。プリオン蛋白の組織学的・蛋白生化学的な性状は類似していたものの、臨床経過や合併する病理変化には違いがみられていた。一卵性双生児におけるこれらの所見は新規のものであり、オリゴマー分画の解析に併せて現在も検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)やV180I変異を伴うCJD (V180I CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)、またGSSの一卵性双生児症例ににおいて通常のwestern blotとオリゴマー分画の解析が終了している。それぞれのオリゴマー分画において、特徴的なPK抵抗性プリオン蛋白のバンドパターンが得られた。現在、CJD type 2症例やE200K変異、178番変異プリオン病、硬膜移植後CJDなどに関しても検討を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
保存期間に制限ある抗体製材を次年度に購入するため。
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次年度使用額の使用計画 |
各種抗プリオン抗体や2次抗体、およびWestern blottingに使用する物品の購入にあてる。
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