研究課題
ヒトプリオン病の確定診断には病理解剖が不可欠である。病型分類には、プリオン蛋白遺伝子の変異やコドン129M/V多型、剖検脳のwestern blotによるプロテアーゼ抵抗性プリオン蛋白の検出とバンドパターンが重要である。近年、強い感染性や神経細胞毒性を有しているプリオン蛋白 (PrP)オリゴマーの重要性が注目されている。本研究では、ゲル濾過遠心カラム法でPrPオリゴマーを分取し、プロテイナーゼK抵抗性PrP (PrPres)も含め蛋白生化学的性状を明らかにし、その病型や組織像との関連を検討した。孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)、V180I変異を伴うCJD(V180I CJD) 、P102L変異を伴うゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(P102L GSS)、178番2塩基欠失プリオン病(178 Prion)を検討した。sCJDは中枢神経に異常なPrPのシナプス型沈着が観察され、分取したオリゴマー分画には無糖鎖型、一糖鎖型、二糖鎖型のPrPresがみられた。V180I CJDではシナプス型と小球状のPrP沈着を認め、オリゴマー分画には無糖鎖型と一糖鎖型のPrPresに加え、10kDa付近のPrPresも認めた。P102L GSSではプラークとシナプス型のPrP沈着を認め、オリゴマー分画にsCJDと同様のパターンを示すPrPresと9kDaのPrPresを認めた。178 Prionでは粗大なPrP凝集が多数みられ、オリゴマー分画に9kDaのPrPresを多く認めた。いずれの病型でも、PrPresはオリゴマー分画にみられており、その重合する傾向が示された。低分子量PrPresは、PrPプラークや粗大凝集が見られる病型に特徴的であったが、その構成成分の詳細や毒性に関しては今後の検討課題である。なお、全ての症例においてモノマー分画は正常型PrPのみであった。
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EUROPEAN JOURNAL OF NEUROLOGY
巻: 23 ページ: 196-200
10.1111/ene.12905