研究概要 |
合成HSP27(rHSP27)の脳保護効果と複合体(αB-crystallinとHSP20)の影響に関する解析を行った。recombinant HSP27 (rHSP27)をMAPKAP kinase 2でリン酸化したリン酸化合成HSP27(prHSP27)を用い、ヒトリンパ球由来HSP27(hHSP27)と同様に脳保護効果に関して検討行った。rHSP27に比してprHSP27はhHSP27と同様にリン酸化されており、多数のsmall oligomerを形成していることを確認した。このprHSP27をマウスの脳虚血再灌流モデルに経静脈的に投与したところ、虚血巣内の神経細胞内に取り込まれていることを確認した。次にprHSP27の脳保護効果を確認するため、虚血再灌流24時間後の脳梗塞の体積を評価した。prHSP27は24時間後の梗塞巣の体積を49%有意に減少させた。hHSP27, pHSP27+αB-crystallin+HSP20でも同様に有意な脳保護効果が確認できたが、αB-crystallin, HSP20それぞれ単体では有意な脳保護効果は認めなかった。またprHSP27, hHSP27, prHSP27+αB-crystallin+HSP20投与群では脳梗塞24時間後の神経機能障害も有意に改善示していた。さらにはprHSP27投与はコントロール群に比し、脳梗塞周囲部でのアポトーシス(cleaved caspase-3, TUNEL), 酸化的ストレス(8-OHdG), 炎症性グリア反応(Iba-1)の発現が有意に抑制されていた。これらの結果は活性型合成HSP27(prHSP27)がαB-crystallinやHSP20とは独立して作用し、脳梗塞後のアポトーシスや酸化的ストレス、炎症反応を抑制し脳保護作用を示していることを確認できたものと考える。
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