研究実績の概要 |
【目的・方法】筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis; ALS)と前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia; FTD)はしばしば合併し、共通する遺伝子変異としてC9orf72(以下C9と省略)第1イントロン上のGGGGCCリピートの異常伸長(数百-千リピート)が同定された。C9ALS/FTD発症機序解明の糸口を得るため、本研究では「C9変異により惹起された標的遺伝子群の発現異常と結合タンパク質群のネットワークの破綻により、神経細胞死が誘導される」との仮説を考案した。これを検証するためにマウス運動ニューロンNSC34細胞にC9 siRNAを導入して遺伝子発現プロフィールを調べ、C9ALSに関する公共データを再解析して分子ネットワークを調べ、共発現遺伝子解析もしくはFlagC9発現NSC34細胞のプロテオーム解析により、C9結合タンパク質を調べた。【結果】C9 siRNAを導入したNSC34で軸索束形成制御因子Fez1の発現低下を認めた。C9リピートRNA結合タンパク質はposttranscriptional RNA processingと関連し、C9ALS iPSC由来運動ニューロンではextracellular matrix (ECM)遺伝子群の発現低下を認め、C9ALS頸髄運動ニューロンではactin cytoskeleton制御遺伝子群の発現異常が見られた。C9結合タンパク質としてNNA1, Smcr8を同定した(最終年度の成果)。【結論】C9リピート異常伸長はposttranscriptional RNA processingの異常を惹起し、ECMや細胞骨格のホメオスタシスの破綻を来して、神経細胞死を誘導している可能性がある。Fez1, NNA1, Smcr8は病態修飾因子として働く可能性がある。
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