研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis, ALS)は、成人発症の運動神経変性疾患であり、進行性に運動ニューロンのみが変性し脱落し、発症後3-5年で死に至る神経難病である。有効な治療法がなく、早急な発症機構解明と治療法開発が求められている。我々は、昨年度までに、小児発症の運動神経変性疾患である脊髄性筋萎縮症SMAとALSの共通性を発見し、両疾患患者の変性運動神経細胞において、スプライシングをになう本体であるスプライソソームの異常があること、核内構造体であるGEM小体が消失していることを見いだした。更に、変異が家族性ALSを発症させるRNA結合蛋白質であるfused in salsoma (FUS, also refferd as TLS)の機能解析を行った。FUSに変異が導入されることによるRNA代謝異常の原因を探るため、変異によるFUSの細胞内局在の変化を観察した。20種類以上の変異に対して解析したところ、核から細胞質への移行が見られる変異体が多く、更にRNA顆粒への取り込み率が上昇する変異体が多かった。しかしALS患者の発症年齢との相関はなく、そのFUSの局在変化の重要性は以前不明である。一方、変異FUSを神経細胞へ発現させたトランスジェニックマウスを作成したところ、生存率の低下と体重減少が観察された。更に、脊髄運動ニューロンの変性が観察された。現在、ALS患者運動ニューロンで観察されたRNA代謝異常がないか検討中である。
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