研究実績の概要 |
当研究室にて樹立したラット不死化シュワン細胞株IFRS1およびDRGニューロン-IFRS1、PC12-IFRS1の各共培養系を用いて、軸索再生・髄鞘形成促進因子の作用機構解明や、糖尿病性神経障害をはじめとするニューロパチーの病態解明を進めてきた。 1) 高グルコース負荷IFRS1細胞における糖化関連因子receptor for AGE (RAGE)およびgalectin-3 (GAL-3)の発現誘導を明らかにした。RAGEが糖尿病性神経障害の発症増悪因子として細胞傷害的に作用するのに対し、GAL-3は酸化ストレスマーカー4-hydroxynonenalの発現を抑制する等、細胞保護的に作用する可能性が示唆された。(Tsukamoto et al., Neurosci Res, 2015)。 2) 新規糖尿病治療薬であるglucagon-like peptide (GLP)-1受容体作動薬exendin-4 (Ex-4)の末梢神経系細胞に対する直接効果を検討した。Ex-4はDRGニューロンの突起伸長や生存を促進するとともに、DRGニューロン-IFRS1共培養系における髄鞘形成を誘導した。またその作用機構にPI3 kinaseの活性化や軸索再生阻害因子RhoAの活性阻害が関与する可能性が示唆された。(Tsukamoto et al., Histochem Cell Biol, in revision) 3) 抗不整脈薬amiodarone (AMD)による末梢神経障害の病態を解明するため、IFRS1細胞やDRGニューロン-IFRS1、PC12-IFRS1の各共培養系にAMDを負荷し、その毒性を解析した。AMDはIFRS1細胞に酸化ストレスマーカーNrf2やオートファジー関連因子p62の発現を誘導するとともに、共培養系からのIFRS1細胞の選択的脱落を惹起した。以上より、AMDはシュワン細胞における酸化ストレス亢進やオートファジー不全を介して脱髄を誘導する可能性が示唆された。(Niimi et al., in submisssion) 4) ヒトtransthyretin遺伝子変異を導入した不死化シュワン細胞株TgS1を樹立し、その培養上清がDRGニューロンの突起伸長を阻害することを明らかにした。(Murakami et al., J Neurochem, in press.)
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