研究課題/領域番号 |
25430057
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
内原 俊記 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 副参事研究員 (10223570)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 心臓交感神経 / αシヌクレイン / MIBG心筋シンチグラフィー / パーキンソン病 / レヴィー小体型認知症 |
研究概要 |
パーキンソン病と臨床診断された例を剖検すると、1割以上がパーキンソン病と異なる疾患であることが知られており、臨床診断の精度はまだ改善の余地がある。これまで別々の群で検討されてきた MIBG心筋シンチグラフィーと剖検所見を今回はじめて同一群で比較し、MIBG取り込み低下と心臓交感神経脱落の間に定量的相関があることを確定した。 研究実績1:MIBG施行例の剖検例との比較:本研究ではMIBG取り込みが生前に検査された剖検例30例を日本全国から集積し、MIBG取り込み低下の程度と心臓交感神経の脱落の程度に定量的な相関があることを示した。心臓交感神経脱落がMIBG取り込み低下に直接関連することを示した世界で初めての研究である。MIBG取り込みはパーキンソン病のみならず、同様にレヴィー小体をもつレヴィー小体型認知症でも低下することが知られており、今後検索の範囲を拡大して臨床診断の根拠と限界をさらに明らかにする。 研究実績2:心臓交感神経の心筋内追跡:その心臓交感神経は心筋の外側から内側へ細かに分岐しながら分布している。最近導入したvirtual slideシステムは高倍率の顕微鏡写真を繋ぎ合わせて標本全体を観察できるデジタルデータを構築できる。このデータを用いて広い範囲の交感神経の突起を詳細に追跡するために、本研究で予定した高精細55インチdisplayとそれを駆動するコンピュータを導入した。従来の1920x1060ピクセルのdisplayに比して,導入した3840x2160ピクセルのdisplayは4倍の情報量を呈示でき、広範囲の情報を解析する上で絶大な力を発揮している。これまでの我々の研究から心臓交感神経突起の末端にレヴィー小体が早期に形成されると想定し、心筋内にひろがる交感神経線維全体を顕微鏡で追跡している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定したMIBG施行の剖検を用いたMIBG所見と心臓交感神経の相関および心臓交感神経の心筋内追跡は以下の通り順調に進展できた。 研究実績1:MIBG施行の剖検例を用いた心臓交感神経機能と病理所見の相関:各地の関連施設との共同でMIBG施行済の剖検例 30例の心臓を集積することができた。MIBG取り込み低下と心臓交感神経脱落の程度を半定量的に検索し、平成25年度の日本神経学会学術集会で予備的に報告した。その後両者の程度を定量し、より精密な相関を得て平成26年度の日本神経学会学術集会で発表する。 研究実績2:心筋内を走行する交感神経軸索を標本全体で追跡するシステムの確立:計画に従い、virtual slideを用いデジタルデータ化を行い、高精細モニターを用いた詳細な追跡を行う体制を確立した。予想した通り、心筋内の交感神経軸索は高度に分岐しながら心内膜下まで達し、一部にαシヌクレインの凝集を認めた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に添ってこれまでの研究は順調に進展しており、予定に添って以下の研究を進める。 MIBG低下と心臓交感神経の脱落が相関しない剖検例の検討:MIBG心筋シンチグラフィーの撮像頻度が増えるにつれ、生前にMIBGが施行された剖検例も集積してきた。この中に、両者の相関に乏しい例が混在している。レヴィー小体が存在しても辺縁系に限局し、脳幹に見られない場合は心臓交感神経が保たれる例や、レヴィー小体が嗅球に限局しても心臓交感神経が脱落している例等がみいだされている。これらのズレの背景機序を明確にして、MIBG心筋シンチグラフィーの診断的意義と限界を明らかにする。 心臓交感神経軸索末端に想定される最早期病変の同定と免疫電顕による検討:αシヌクレインは軸索末端にまず沈着すると想定されるが、軸索末端を電顕像でとらえるのはこれまで困難であった。我々が開発した3D-oriented immuno electron microscopy法は免疫染色して光学顕微鏡的に同定した構造をそのまま免疫電顕として観察できる新たな手法である。平成25年度に確立した方法で軸索を追跡し、その末端に想定される最早期病変を電子顕微鏡で観察し、分子を背景とした超微形態をとらえる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時研究補助のための人件費を計上していたが、施設内の経費から一部捻出できたため、本研究費からの支出を要しなかった。 解析用の大形コンピュータを25年度末に導入したが、これを用いた画像解析をより効率的に行うため、ソフトウエアや周辺機器の整備に充当して、より効率的な運用を目指す。
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