研究実績の概要 |
神経変性疾患では細胞体に先行して神経突起に病変がみられることを我々は明らかにしてきた(Brain2008)。本研究は疾患特異的なこれらの突起病変をとらえて、早期臨床診断につなげる試みで、神経細胞体から神経突起へと視点を移した「神経突起病理学」を構築して、病態理解やそれをふまえた早期臨床診断に生かすことを目指す。 実績1:心臓交感神経はレヴィー小体が中枢・末梢神経・自律神経系のいずれかに存在する例で脱落することをこれまでに明らかにした。これに対応する MIBGの心筋への取り込み低下はレヴィー小体の存在を予見する感度、特異度の高い臨床検査としてパーキンソン病、レヴィー小体型認知症の国際臨床診断基準に採用されている。 実績2:高齢カニクイザル心臓の軸索病変の検討:ヒト心臓交感神経軸索がαシヌクレイン沈着の好発部位であるとすれば、高齢サルの心臓でも同様の変化が期待される。そこで死亡時30歳代までのカニクイザルの心臓を入手し、αシヌクレイン、neurofilament免疫染色、より感度の高いCampbell-Switzer染色で封入体の有無を検索した。αシヌクレイン陽性構造を認めない例でも一部にCampbell-Switzer陽性像を認めた。 実績3:進行性核上性麻痺例で、心筋のMIBGとりこみが低下した4例で、心臓交感神経は保たれる、Lewy病理が見当たらない4例を見いだした。軸索最末端の軸索病変か、機能的変化により MIBG取り込み低下が起こりえる場合があることを初めてあきらかにした。(2017WCN, 世界神経学会で発表予定) 実績4:進行性核上性麻痺の 4Rタウには反応しないが、アルツハイマー病の4Rタウには反応する抗体分画を取り出すことに成功した。(特許出願準備中)
|