研究課題/領域番号 |
25430058
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
矢澤 生 独立行政法人国立長寿医療研究センター, バイオリソース研究室, 室長 (20312217)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / alpha-synuclein / 微小管タンパク質 / チューブリン |
研究実績の概要 |
中枢神経の病気の中で、認知症のように「脳の神経細胞が徐々に脱落する」病態を神経変性と呼ぶが、多くの神経変性は神経細胞にタンパク質が異常に蓄積することが原因であることが知られている。パーキンソン病や多系統萎縮症について病気で死亡した患者脳組織を調べることにより、中枢神経の病変では神経細胞やグリア細胞にalpha-synucleinタンパク質が蓄積して神経細胞が脱落し、運動機能障害や認知機能低下の症状が起こることが明らかになった。本研究では神経変性に対する根本的な治療法開発を目指し、ヒト脳組織の解析から得られた知見から、治療法標的となる分子の同定や変性過程の解析を行った。我々の過去の動物モデルの実験などから、alpha-synucleinは神経細胞で微小管のチューブリンタンパク質と結合して不溶化、蓄積することが明らかにした。本研究では第一に、微小管と結合し蓄積するalpha-synucleinの蓄積では、マウス脳の初代培養の研究から、オリゴデンドロサイト(グリア細胞)から発するシグナル分子としてシスタチンが引き金になることを解明した。第二の研究成果として、治療標的としてalpha-synucleinの微小管チューブリンタンパク質との結合を阻害すると、タンパク質の蓄積が抑制され、神経細胞死が抑えられることを見出した。これら2つの研究成果は、オリゴデンドロサイトに関係する神経細胞の変性では、alpha-synucleinの蓄積を抑制することが可能であることを示し、新しい治療法開発に向かう足掛かりをつくった。さらに、alpha-synuclein蓄積抑制の治療標的としてシスタチンに関する阻害効果を対象とすることが重要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経細胞において、不溶化、蓄積を起こすalpha-synucleinと結合する微小管の結合部位の絞り込みを行った。さらに、微小管のアミノ酸配列の一部を持つ微小管フラグメントにより、alpha-synucleinの蓄積が抑制されることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
alpha-synucleinと微小管の結合阻害により、alpha-synucleinの蓄積が抑制されることが分かった。今後さらに、アポトーシスの抑制効果を検討し、競争阻害化合物の同定などにより患者治療法の開発に挑戦する。具体的には、alpha-synucleinの蓄積に対して抑制効果のある化合物の検討を行う。この際には、alpha-synucleinの蓄積を誘導するシスタチン効果の検討によりその機序を解明し、抑制的及び相補的に作用する分子の動態を明らかにする。さらに、小規模なマススクリーニングを行える実験系を確立を行って、効果的に発病機構を抑える化合物の同定をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
第一に、実験計画のうち、アポトーシス関連の実験試薬について実施が遅れた。第二に、人件費を伴う臨床検査技師業務等に関する研究が遅れ次年度に実施する予定となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度のため、実施できない物品や遅延を招く実験物品の購入は行わない予定である。また、平成27年度は人件費を支出する研究を実施する。
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